-Death On The Stairs-

So baby please kill me Oh baby don't kill me 浦和とかサッカーとかサブカルとか。

「魂の重さ21g、舞台少女の煌めき130g」少女☆歌劇レヴュースタァライト8話「ひかり、さす方へ」がドチャクソ良かったという話。 

gうわぁぁぁぁ「少女☆歌劇レヴュースタァライト」第8話「ひかり、さす方へ」がドチャクソ良かったんじゃぁぁぁ!!!

ということで、このパッションを思うがままに書きとめたい、というだけでこの記事を書いております。8話書いたから9話も書くとは限らないんでアレですけど。

いつもの「考察」とはちょっと違う「感想」記事ですけど、気を抜いてお読みいただけると嬉しいです。

※本稿は8話「ひかり、さす方へ」はもちろん、「レヴュースタァライト」のネタバレがバンバン入っております。予め視聴後ご一読いただくことをおススメいたします。

※あと、こんな駄文読むよりもアニメ本編を何度も見直す方が有意義ですとも言っておきます。是非「少女☆歌劇レヴュースタァライト」を見てください。よろしくお願いいたします。

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■神楽ひかり

物語序盤から「謎の人物」であったひかり。自ら積極的に「オーディション」という名のレビューに参加しながら、幼馴染である華恋が参加することは阻もうとする。

その行動の要因が謎だったわけだが、それ以上に謎だったのは神楽ひかりの「実力」。

招かれざる転校生。イレギュラーな存在。

明らかに「強者」的な立ち位置にいながら、第1話の純那戦では華恋の乱入がなければ「あわや」という事態まで追い詰められた。

劇中ランキングでも天堂真矢や西條クロディーヌ、大場ななに比べて目立たず、これまでしっかりと実力を示してこれたわけではない。

立ち位置に反して決して「強い」わけではないひかり。

その理由が最大の謎だったわけだが、この8話でようやくその理由の種明かしが為された。

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■オーディション

謎のシステムであった「オーディション」そして「レビュー」。

舞台少女の心の「煌めき」に舞台装置が反応し、より「煌めき」が強い舞台少女に「有利」な場が組まれていく舞台。その中で戦い「輝き」を奪い合う。それがレビュー。

一度敗れたとしても「オーディション」が続く限り何度でも参加可能なこの戦いに敗れた場合一体「何を失うのか」

ずっと謎だったその「失うもの」もこの8話で明らかになった。

幼き日に華恋と誓った「スタァになって舞台で再開する」という約束を守るべく英国音楽院で自らの実力を磨いていたひかり。

そんな彼女にもちかけられる「トップスタァ」への近道と言う名の「甘言」。

「オーディション」に勝ち抜けば、トップスタァとしての「煌めき」を手に入れることが出来る。

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キリンの言葉に従って「オーディション」に挑んだ彼女。しかし最後の最後に敗れ、「トップスタァ」への夢に敗れてしまう。

敗れた彼女が失ったのは「舞台にかける情熱」であり「舞台で示す煌めき」。即ち彼女がこの数年で磨いてきた全てだった。

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「オーディション」の仕組みとは要するに、参加者それぞれの持つ「煌めき」が意図せず賭けの対象とされ、敗者は自らの輝きを優勝者に渡さねばならないというもの。

「優勝者」が「トップスタァ」になれるのは、他の舞台少女の「煌めき」を根こそぎ「奪ってしまうから」に他ならなかったわけだ。

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それがこの「オーディション」というシステムだったのだ。

 

■失った130g

神楽ひかりが失ったもの。それは130gの「重さ」。

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体重42kgの少女が失った「130g」にどの程度の価値があるのか。

それは一概には分からないもの。

けれどもこの「重量」が、神楽ひかりが幼馴染との日々を捨て、「トップスタァ」となるために自らを研鑚する中で積み上げた「時間」と、その果てに手にした「煌めき」の「重さ」であることは確か。

人は死ぬときに21gだけ軽くなる、だから人の魂の重さは21gなのだ、なんていう科学実験もあったけれども、そう考えればこの130gにもずっしりとした重量感が生まれてくる感じもするのだ。

 

■残された煌めき

「煌めき」が失われてしまったことで、舞台に立つ「意味」も「情熱」も全てを見失ってしまったひかり。

そんな彼女に唯一残されていた小さな「煌めき」。

それは幼き頃に華恋と交わした「約束」だった。

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自分を「舞台少女」へと変えた、原初の「煌めき」。その小さな小さな「煌めき」を頼りに「舞台少女」としての自分をかろうじて取り戻したひかりは、オーディションの仕掛け人であるキリンへと迫る。

 

■キリン

オーディションで敗れたにも関わらず小さいながらも「煌めき」を残していたひかり。その事実はキリンにとっても「意外」であり、故にひかりの存在はキリンにとって「異端」でもあった。

キリンは再度ひかりに「オーディション」参加を呼び掛ける。

もしも「オーディション」で勝ち残れば、もう一度失った「煌めき」を取り戻すことが出来る。

その代わりひかりは残された最後の小さな「煌めき」を「戦い」に賭けなければならない。

この戦いに敗れた時、ひかりは本当に「舞台少女」でなくなってしまう。それだけでなく大切な「思い出」や「約束」までもを失う羽目になる。

ひかりにとっては「勝つしかない」戦い。

それを持ちかけるキリンが、英国博物館の骨格標本越しにその存在を露わにする。

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映画「サイコ」でも動物骨格は「死」や「死神」のメタファーとして扱われた。

こういった描写から、キリンという謎の存在の「正体」がじんわりとだが炙り出されていく感覚がある。

 

■ひかりの武器

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小さくなったひかりの武器。武器の大きさとは「舞台少女」の持つ「煌めき」に対応していたという事実がここで明らかになる。すなわち「武器」の「強さ」や「大きさ」はその「舞台少女」の「煌めき=実力」とも密接に関係していたわけだ。

登場する舞台少女たちの中でも極めて小さな武器を持っていたひかり。そして決して実力を示せていたわけでもないひかり。その「理由」がここで明らかになる。

彼女が「強くない」理由は「煌めき」の大半を失っていたからなのだ。

そして彼女の持つ武器とは、彼女が「舞台少女になろう」と誓った、あの日の「小さな決意」そのものの大きさなのだと分かる。

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ほんの小さな「希望」と「決意」を握りしめて、勝てる見込みの無い戦いへと挑むひかり。その姿を応援したくなってしまうのは致し方なしだろう。

 強く掲げた掌(てのひら)すり抜け

奈落に落としたあの日の誓い

再び上る運命(さだめ)の舞台

例え悲劇で終わるとしても....

九十九期生 神楽ひかり!

全ては スタァライトのために!! 

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掌から零れ落ちた武器を繋ぎとめる「鎖」。

その「鎖」はまさしく華恋との「約束」が具現化したもの。

零れ落ちそうになった「煌めき=剣」を「鎖=約束」が繋ぎとめる。

ひかりの武器自体がひかりの「小さな煌めきそのもの」を具現化した存在であるという事実。

その事実にとにかく痺れる。

そして 遂に披露されるひかりの”口上”。

「ひかりの物語」が明らかになった今だからこそ披露される、そして今だからこそ「突き刺さり」「痺れる」。

このシーンの素晴らしさだけでこの回に5億点を差し上げたくなってしまう。

 

■RE:CREATE

いよいよ大場ななとの戦いに挑むひかり。二人のレビューのタイトルは「孤独のレビュー」。レビューを彩る楽曲は「RE:CREATE」。

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直訳するならば「作り直し」

7話で明かされたように、大場ななは「自らの最高の舞台を再現する」ために、また「全ての舞台少女を絶望から救うために」「オーディション」で勝ち続け、その優勝の代価として何度となく同じ時間を「ループ」させ続けているというある種の「狂気」に駆られた人物でもある。

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また大場ななといえば大きな「孤独」と「絶望」を抱えた人物でもある(その理由は今だ謎)。そう捉えるとこの舞台はいかにも大場ななに有利な舞台であるようにも思えてくる。

しかし物語後半、この意味がガラリと反転していく。そこもまたこの8話の「気持ちよさ」に繋がっているように思える。

 

■大場ななの「強さ」

自らの「願い」を叶えるために「同じ時間軸を何度も繰り返す必要のある」なな。

彼女の願いはまっすぐに「歪んでいる」ものの、そのまっすぐさが彼女の「強さ」そのものにも繋がっている。

「願い」を叶えるために、もはや気が遠くなるくらいに戦い続け、勝ち続けてきたなな。彼女はもはや常に「最強の実力者」であるはずの天堂真矢を圧倒するほどに強くなってしまっている。

彼女の持つ「煌めき」はただひたすらに肥大化し、彼女は舞台少女の中では別格の「実力者」になってしまっている。「原初の煌めき」しか持たないひかりが軽く一蹴されてしまうのは当然で、舞台少女の「煌めき」に呼応する舞台もまた、ななに有利な場を作り上げていく。

圧倒的優勢なななが作り上げた舞台は、ひかりが自らの「煌めきの消失」を自覚した英国時代の舞台。

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あの時「失ってしまった煌めき」という事実に耐えかねておろしてしまった剣。そのトラウマがひかりに襲い掛かる。もはやなな勝利確実という最中に、華恋と交わした「約束」が「煌めき」となってひかりを奮い立たせる。

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舞台少女としての「全て」を失いそうになったひかりを、今この場に繋ぎとめているのは、「スタァライト」を始めてみたあの日の誓いがあるから。

始めはただ華恋の前でお姉さんぶりたいだけで、「舞台への渇望」なんてまるでなかったひかり。そんなひかりに「舞台への渇望」を与えたのは華恋。彼女が「二人でスターになってみんなをスタァライトしちゃおう」と言ったあの日。そこではじめて「舞台少女神楽ひかり」が生まれたのだ。

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ここで絶望に呑み込まれて、ななに敗れてしまったら、自分を救ってくれた華恋との「約束」を守れなくなってしまう。

今ここに再び「戦うチャンスを与えてくれた希望」をも裏切ることになってしまう。

だからこそひかりは頼りない小さな煌めきを手に再度立ち向かうことを決める。「もう負けない!」と叫んで。

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華恋との約束があるから「戦える」。

ひかりの中から「煌めき」が溢れ出す。

「孤独のレビュー」を「孤独ではない心」が乗り越えた瞬間、舞台はその「心」に応えて変化する。

武器もまたひかりの発する「煌めき」に呼応し、変化する。

レビューにおいて初の「第二幕」が発動する。

 

■華、ひらくとき

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ひかりの「煌めき」がななの「煌めき」を圧倒し、舞台は第2幕「華、ひらくとき(Blooming the star)」へと変化する。

小さくなってしまっていたひかりの武器。

元の大きさに戻るわけではなく、煌めきに呼応し、変形する。

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二人の夢が 開くわ

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第2幕のタイトルと同じように「星が花開いた」かのように変形したひかりの武器。

この形にひかりの武器が変形した...ということは、もはやひかりの勝利がこの舞台において「確定している」という印象を受ける。ここもまた痺れるポイントだ。

「煌めきの再生産」

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キリンの思惑を超えた部分で「再生」された「煌めき」。

レビュー楽曲である「RE:CREATE(再生産)」までもがひかりのための楽曲へと生まれ変わっていく。

逆境を自らの力で180度塗り替えていくシーンの快感たるやない。映像的な見せ場の美しさ・劇伴の素晴らしさ・そして何よりも「RE:CREATE」を歌唱する三森すずこさんの歌声の素晴らしさが物語への没入と興奮を高める。

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一緒に幼い日 植えた小さな種

大きく花開いゆく 星が導いた

もう負けない 諦めない 手を伸ばす君の方へ

逃げ出さない ナミダしない 約束の場所へ 

会いたかったよ 君にずっと 

もう一度 つなぐ星の絆 奇跡起こせる

 「同じ時間を繰り返す」という、確かに「絶望」はないものの、「未来」を描くことが出来ない「繰り返しの煉獄」へと誘う主である大場ななを、「二人で主役になる」という「不確定な未来」という名の「希望」を信じる神楽ひかりが打ち倒していく。

そしてその根幹となる力は、今この瞬間に生まれた「希望」であり「煌めき」である。

そういった文脈的な意味合いの素晴らしさを除いても、ここからのアニメ的な楽しさたるや無い。

ひかりのななに対する攻撃は正直冷静に考えると「よく意味が分からない」けれども、アニメとしての動きの気持ちよさが理屈を乗り越えて、「ひかりの勝利」を予感させる。

楽曲の盛り上がりとドライブするように、鎖を辿ってグワーっと画面内を回転するひかりの姿を見て興奮しない人がいるだろうか。こういうシーンを見ている時に一番「アニメっておもしれー!」となるのだ。それを思い出させてくれたことが何よりもこの8話の素晴らしいところだ。

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楽曲最大の「キメ」と呼応して、爆発する画面。ここも「分かっている」。

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ハラリと落ちるななのマント。

そしてひかりが初めて発する「ポジションゼロ!」の宣言。

あまりの完璧さに何度見ても震えてしまう。

「レヴュースタァライトの世界」の「楽しさ」をここまでハッキリと見せられてしまったら、もはやこの作品を追いかけざるを得ないだろう。

敗れてしまった大場なな。しかし彼女の「願い」は変わらない。全ての「舞台少女」を「絶望」から救うため、誰も「傷付かない」「奪い合わない」「煌めきを失わない」世界を「再生産」し続ける。

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一見狂っている大場ななの「願い」だが、その根幹には彼女の「優しさ」とそれ故の「思い」も潜んでいる。

このままいけばやがて華恋とお互いの「煌めき」を賭けて戦う羽目になる。果たしてそれで良いのか。

また華恋が言うように「二人でオーディションに合格する」などという未来があり得るのか。それも分からない。

ひかりはななに勝利したが、新たなな課題を抱えることになる。

 

■大場ななが改心しない理由

最後にちょっぴり考察っぽいことを。

大場ななは今回神楽ひかりに敗れてしまったわけだが、彼女が趣旨変えをすることはなかった。今後も彼女は「永遠」を「繰り返すため」に戦うのだろう。

大場ななの思考には「永遠に素晴らしかった過去を繰り返したい」という「歪み」と「狂気」があることは確か。

だがもう一つ大事なのは彼女が「オーディション」というシステムにおいて「傷付く舞台少女を生み出したくない」と考えていることも確かだという事だろう。

今回明らかになったように「オーディション」は非常に残酷な制度だ。

勝利した「一人」はあまねく「煌めき」を手に入れることが出来る。

しかしその代わり敗れた舞台少女は自らが元々持っていたり、努力の末手にした「煌めき」を完膚なきまでに手放し、「ただの人」になるしかない。

それが果たして「是」であるのか。ここに解答は出ていない。

ななが望むのは「全ての舞台少女が傷付かず、救われる世界」である。

そう考えれば、彼女の想いもまた、この物語を考えるうえでは重要なのかもしれない。

「過去」ではなく、「未来」に向かって、全ての「舞台少女が救われる」可能性があるのだとすれば。

その結末にたどり着くうえで、華恋やひかりだけでなく、ななもまた「重要な登場人物」なのかもしれない。

ということで今後も「少女☆歌劇レヴュースタァライト」を楽しませていただきたいなと思う次第である。

あぁ8話面白かった。

 

 

生きるっつーこと

前のブログからこのブログに移行して今日で2年なんだとか。だから別にそれがどうってわけではないんだけど。

折角だからなんか書こうと思って、書き始めたけれど、特段言いたいこともないし、取り留めのも無い話をしようかなと思う。

 

僕はよく口癖のように「虚無だ虚無だ」なんて言うので、一部の人には「あいつは虚無を生きている」と思われているのだけど、それは一部は正解で一部は誤解だ。

僕はこの世の中は「無」だと思っているし、それは確かだ。

だってあまりにも不条理に満ちている。

頑張ってても報われないこともあるし、ボーッとしててもラッキーなことが起きることもある。善い人が長生きするわけでもなければ、悪いヤツに天誅が下るわけでもない。世の中は大抵が「不条理」でそこに理屈はない。そんな「不条理」を僕らに操作する手立てもない。

そう思うとやっぱり根本的に世界は「無」に包まれているような、どうしょうもない無力感に支配されることもある。

とはいえじゃあ「虚無」を受け入れて、「死んだように生きていくべきか」っつーとそうは思わない。

世界が「不条理」で本質的には「無」だからこそ、やらねばならんこともある。

そんな風に思うようになったのは、身近に「不条理」な「死」が何回か起きているからかもしれない。

 

中学のころ「仲間」がいた。友達というよりもそいつは「仲間」に近くって。同じクラスでもなければ、特段親しく話す間柄でもない。絵を描くのが得意で、ゲームが得意なやつだった。多弁な方ではなくて、どちらかというと寡黙で、目立たないけど、クラスの中ではなんとなく一目置かれているみたいな、不思議な雰囲気のヤツだった。

さっき書いたみたいに、学校で特別話す間柄ではなかったけど、地元のゲーセンで逢った時とか、自然とゲームの話をしたり、好きなマンガの話をしたりするような、独特な関係性だった。しばらく経って奴から聞いたのは「お前にはどこか自分と似たところがあるから、同志だと思ってた」なんて言われて、ほんの少しだけ嬉しかったのを思い出す。

そいつが中2になるくらいから学校に来れなくなった。詳しいことは分からなかったけど、どうやら困難な病気になったらしくって、治療に専念せざるを得なくなったのだと聞いた。さっきも言ったけど、表面上特別仲の良い友達というわけではなかったから、お見舞いに誘われることもなくって、しばらくが過ぎて。

高校に上がる直前くらい。ある時急にお呼びがかかった。「なんで俺?」と思ったけど、ヤツが僕を指名したのだそうだ。

 

久々に会ったヤツは雰囲気が変わっていて。色々なものを乗り越えて、どこか達観した存在になっていた。体力的には相当弱っていて、ベッドから移動することもかなわなかったけど、それでも難病にかかっているわりには、元気そうな振る舞いだった。

何を話したのかはサッパリ覚えていない。なんか確かその時流行っていた格闘ゲームの話とか、ヤツが書いたイラストの話とか、そんなことしか話さなかったような気がする。

一番驚いたのは、ヤツが「神様」を信じていたことだ。本当につらくって、心が苦しくなった時、仮に死んだとしても「行く場所がある」と言ってもらえるのが、心の救済になったのだそうだ。だからヤツは神様に関するイラストを何枚も何枚も書いていた。

僕は昔っから「神様」なんて信じないけど、ヤツが本当に救われたような表情をしていたから「それならそれでも良いのかもなぁ」とか考えていた。

そんなことがあってから、割とすぐにヤツは逝ってしまった。まだ高校生になった直後だった。身近な人が、しかも自分と同じ年の人間が逝ってしまうのは、自分でも想像以上にショックだった。

僕はヤツのことが、才能豊かなところも含めてなんだかんだやっぱり好きだったし、当たり前だけど死んでなんて欲しくなかった。

なのにヤツのご母堂は「神様のところにいって救われます」なんて言っていて、僕はそれが本当にイヤでイヤで仕方なかった。受け入れられなった。「神様のところにいってから救うくらいだったら、今すぐ救ってくれよ」と心底思った。なによりヤツがいなくなったのが悔しくって、悲しくって、どうしようもなかった。

当時からもちろん、大切な存在を失ったご母堂の心を「神様」が救っていたのだと分かってはいたけど。

それでもそういう理屈を抜きに、僕はどうしても納得がいかなくって。それから「神様」なるものを信じようと思ったことは一度もない。

 

しばらくして高3の春に、部活の高2の後輩が、何の前触れもなく逝ってしまった。

生真面目なヤツで、僕が部活の部長を引退したあとは、彼が実質的に部長を務めていた。学年テストで何度も1位になるようなホントに優秀なやつで、でもどこか融通が利かないクソマジメなところもありつつ、そこが愛おしい愛すべきヤツだった。

元々身体がちょっと弱くって、時折学校を休んだりしていたというのは、彼の最大の親友から後々聞いた話で、僕は当時そんなことひとつも知らなくて。

でもだからこそ、親友の彼からしても、こんな事態は予想外で。いつも通りの体調不良が、気付いたら緊急事態になって、呆気なく逝ってしまったのだということだった。

彼が淡々と話すのにつられて、僕も淡々とそれを受け入れたけど、やはりフツフツと「実感」が湧いてくる時もあって、やはりなによりもその「呆気なさ」が痛くて、辛かった。

「なんの因果もなく人は死んでしまう」というそれを、なによりも強く痛く実感させられた。

彼の死後、ちょっとよく分からないのだけど、教員を中心に彼の「功績」を讃える流れが発生して、僕も「文集」とやらに「先輩」としてコメントを寄せるように指示された。もちろん断る理由も無いので、彼との思い出を書きながらも、なんともいえない気持ちに襲われたりもした。

「死んじまってから、どんだけ持ち上げられたって、本人にはなにも返ってこないじゃねーか」

とか、そんな身もふたも無いことを考えていたら、いよいよ無難なコメントしか書けず。期待していた原稿と違った内容を読んで、教員も眉を潜めていたような気がする。

だってしょうがねーじゃないか。彼は悪いヤツじゃなかったし、好きだったけど、だからって聖人君主でもスーパーマンでも超天才でもなかった。それが「死んだ」途端に「そういった存在」として祭り上げられるのって、明らかにおかしくないか。かえって本人を貶めることになるんじゃないかと思ったら、果てしなく無難なコメントしか書けなかった。

それになにより、「死んで追悼される」よりも、やっぱり「生きていて」欲しかったんだ。「死んだことを祭り化する」のが、それが僕の心でずっとつっかえ棒になっていた。というかそっちのがやはり大きかった。「追悼文」というもの自体が、どうにも受け入れがたかった。

「死んで花実が咲く物か」なんて言うけど、ホントその通りだと思う。

 

こんな話をして「僕は彼らの分まで生きる必要があるし、彼らの描けなかった未来を紡ぐ必要があるのだ」なんて、美しい纏め方をしようだなんて、全く思わない。

彼らが描いた過去も、彼らが描けなかった未来も、彼らだけのもので、僕には全く関係がない。それを穢すつもりもない。

僕が思うのは、つまり「過去」も「未来」も、そんなに「重要」じゃないってこと。

人間いつ死んじまうか、まったく計算ができない。二人は「病気」で逝ってしまったけど、それだけじゃなくって僕らに操作できない「不条理」は数多ある。

これを書いて眠った翌日にもう目覚めないかもしれない。明日交通事故で死んじまうかもしれない。

それは誰にも予想できないもの。

だとすれば僕は、「今」をなによりも愛して生きようと思う。

仮に納得できない「不条理」や「不運」があったとしても、それをかけがえのない「今」として受け入れて生きる。そしてそれを受け入れた上で、もう少しその「今」を良く出来るように、ちょっぴり頑張ってみる。その「今」を重ねていく。重ねていく「今」が連なって、生まれていく「日々」を愛する。

それが僕にとってこの「不条理」で「虚無」な世の中で「生きる」っつーことなんだよな...というなんのオチも無い話を、不可思議/wonderboyの「Pelicule」という曲を聴きながら思ったりしたっていう話。


不可思議/wonderboy - Pellicule (Official Video)

 

待ってた、俺達はいつまでも待ってた

来はしないとわかってながらいつまでも待ってた

俺達の知る限り時間ってやつは止まったり戻ったりはしない

ただ前に進むだけだから今日は戻らない日々を思い出して笑おう

今日だけ、今日だけは思い出して笑おう

こういうのってあんまり格好良くはないけど

初めから俺たちは格好良くなんてないしなぁ

不可思議/wonderboy-Pellicule

 

W杯も終わったし、なんなら後半戦始まってますけど??? 浦和レッズ”超個人的” 選手名鑑 2018年

おかしい。

どういうことだろう。

硬派なサッカーブログだったはずなのに、エロゲーの話とかしている。

それどころかサッカーの記事とかまるで書いていない。

これはまずい!完全にアイデンティティクライシスである!!

 

ということで、久々に浦和の記事を書く。

そして俺は「硬派なサッカーブログ書くマン」としての矜持を取り戻すのだ。誰が何と言おうとも取り戻すのだ。いや、ホントマジでよろしくお願いします。ね?

 

...尋常ではないクソ暑気温に見舞われているものの、既にJリーグは後半戦が開始!

ぶっちゃけサッカーとかやってる場合なのか...?という人間の生命活動における根源的な疑問にぶつかる異常気温なわけだけど、動き出してしまったショーを止めるわけにはいかないのだ。しょーますとごーおん。

ということで、後半戦を戦う愉快な仲間たちを、自分勝手な解釈で紹介していくぜ!ヒャッハー!!!

 

1 西川周作 GK

果敢な飛出しと正確なパントキックに定評のある浦和にとっては絶対的な守護神。

...なのだが、実のところ昨年から今年頭にかけては不安定な部分が散見されていた。

まぁ前からダメな日はとことんダメだったけれども。

とはいえ、そのパフォーマンスの波が特に不安定な印象で、結果的に一番の特長であるはずのフィードまでが不安定になる始末。「こいつはどうしたもんか」というのが正直な印象だった。

意識変化は本人も認めるようにW杯以降。

”代表に選ばれなかった”こと、そして代表正GKである川島が必要以上の「バッシング」を受けたこと。この辺りが引き金になって、再び「キーパー」という仕事に向き合った結果、もう一度基本に立ち返ったということらしい(本人談)。

再開後にはビックセーブ連発。仲間のミスにも笑顔で励ますあの周作スマイルも返ってきた。後半戦反撃の狼煙の裏に西川好調あり。定位置は譲らないだろう。

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23 岩舘直 GK

いやー、見ないなぁ。今年いつ出たんだっけ??

と思ったけど、やっぱり公式戦出場なし。

大谷が抜けたとて、榎本・福島というライバルがいなくなったわけではなく。やはり一つのポジションを巡る争いは大変ということ。

今年で29歳といよいよ難しい年齢になってきているけど、どうするのかしら。

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25 榎本哲也 GK

本人が思った以上の苦境だろう。昨年はリーグ戦での出番はないものの、カップ戦では出場機会があったものの、今年はいよいよベンチ入りすらかなわない流れに。怪我という情報も無いので、完璧に若い福島に階層で追い抜かれてしまっている状況。

出場機会を求めるのであれば、選択肢も沢山あるし、需要もあるだろう。

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28 福島春樹 GK 

昨年から徐々に序列を高め、今年は正式に第2GKとして定着。

ルヴァンカップ広島戦で公式戦デビューを飾ると果敢な飛出しや、精度の高いビルドアップでチームに貢献してみせた。

25歳と年齢的にもまだまだこれから伸び盛りの存在でもあり、高齢化進む浦和の中では安心して未来を託せる存在でもある。

ちな一人で映っている写真が無かった。

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2 マウリシオ・アントニオ DF(CB)

昨年8月に「もうどうしたもんだか」な守備陣のテコ入れのために、ロブソン・ポンテの肝いりで加入したブラジル人CB。

確かな足元の技術・空中戦の強さ・豊かなスピードを生かしたカバーリング技術で、加入間もなくレギュラーに定着。身体能力を過信して果敢にインターセプトを挑むシーンなどもあり、「おいおいベテランだろう?」と思うこともあるのだけど、実は26歳なのだ。仏頂面に髭は年齢感覚を鈍らせる。。

今年はオリヴェイラ体制の元、持ち前の得点能力が更に開花。セットプレーでの得点源であり、もはや欠かせない存在。移籍とかマジ勘弁。

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3 宇賀神友弥 DF(LWB/RWB/LB)

あ?DF登録なのね?今年は4バックに取り組もうとしてたからね、などと現状3バックで好調なチームを見て色々複雑な思いを抱いてしまった。(宇賀神関係なし)

タフでハードな仕事を黙々とこなす浦和ユース出身、アカデミー内での成功者の一人。サイドの特攻隊長もいよいよ30歳。ベテランの域に入ってきている。

技術的なものではなく、俊敏性とタフネスを売りにプロとして長年サバイブしているのは見事。そしてそれはハリルホジッチの目にもとまり、日本代表候補まで行ったのだから素晴らしいことだ。とはいえ、日本では彼の「価値」がどうにも伝わり辛いらしく、舐められがち。

プレー自体は一見変化なく見えるが、徐々に円熟の域に入りつつあり、特に駆け引きで相手WBやSBを「疲れさせる」プレーは目立たないまでも非常に効いている。槙野と組む左サイドの崩しはこう着した展開では可能性を示すシーンもあり。

最近では川崎戦での「エンブレムを掴んで気合を入れているシーン」がカッコイイと話題になった。良かったね。

???「ウガジン、ヒジョウニミニクイ」

止めろー!!

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5 槙野智章 DF(CB/LB)

説明不要な浦和のみならず日本サッカー界の広告塔男。

優れた身体能力を軸に、日本代表でも活躍するCB。

彼もまたW杯によって何かを変えられたのか。

予選期間中は完全なレギュラーとして出場するも、監督交代→本番において昌子にレギュラーを奪われる事態に。結果出場はポーランド戦の1試合のみと消化不良の大会となった。元々今年は頭から「CBとしての意識改革」が見られていただけに、本人としても忸怩たるものがあったのだろう。再開後はより「CB」としての「在り方」を明確に意識してプレーしているように見える。

デュエルで抜群の強さを示すタイプではないが、マンマークでの仕事の確かさ、空中戦での勝率アップと主にディフェンス面での才能が開花し、「SBが本職だけど身体能力でCBやってる人」感はやや薄れつつあるだろう。

本格的なCBが不在な日本において、彼がその才能に従ってまい進し、更に成長してくれるのであれば、それは何よりも素敵なことなので、引き続きよろしくお願いしたいところである。

あと、何故か再開後初戦は髪型セットしていなかった。

「心身ともに疲れている」とコメントしていたので、それを表面的にも表現したかったのだろうか。そういうとこだぞ、マッキー(妄想で茶々を入れるのは止めよう)。

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14 平川忠亮 DF(RWB/LWB/RB)

攻守両面にタフに動き、右WBだろうが左WBだろうが、なんならCBだってこなす元祖何でも屋さん。別名「オフトの恋人」。

ヒラさん引退せぇへんでー!ということで今年もバリバリに元気。とはいえ、右には活きの良い橋岡という存在が現れ、レギュラーで活躍中ということもあって、本来右のレギュラーだったはずのマルティノスがベンチ。結果的にヒラさんがベンチに入る余地も無い感じに。。

過去の発言を聞くに彼がここまで現役生活を長く続けるとは思ってもいなかったので、意外である(以前にも同じようなことを言った記憶あり)。

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 17 茂木力也 DF(CB/RB)※レンタルバック

ユース生え抜きのCB。愛媛→山形へのレンタルを経てシーズン中だが復帰。

背景としては移籍の決まった遠藤の穴埋めという要素が強いものの、J2では通算42試合出場。ほぼレギュラーとしてプレーしており、レンタルしての実績はしっかりと残せている印象。正直なところJ2の試合は追い切れていないが、レンタル前には非常に度胸のあるリベロタイプのCBといった印象だった。足元に自信があり、ゆったりとでもボールキープするけども、それが危なっかしさにも繋がる感じ。

山形では複数ポジションを経験したとのことだが、ポリバレント性さえ増していれば、今の浦和では十分に出場機会は得られるだろう。

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 26 荻原拓也 DF(LWB/RWB/SH/LWG/RWG)NEW!

浦和ユースから昇格のDF。

本職はSBでそのポジションで世代別代表にも選ばれているが、機動力を生かしたドリブル突破と正確なシュートをキャンプ時からアピールし、プロデビュー戦となったルヴァンカップ名古屋戦ではWGとして先発出場し、ドッピエッタを達成と周囲の度肝を抜いた。

技術的にはまだまだ荒削りで、正直なところ特筆した「強み」みたいなものもそれほど無いのだが、プレースタイルがハッキリとしているおかげで起用される機会も多い。

縦への推進力の高さは今のところ唯一目立つ部分でもあるので、そこを伸ばしていけばひょっとしたらひょっとして「浦和のベイル」になれるかも??と期待だけはしている。

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 27 橋岡大樹 DF(RWB/RCB)NEW!

ユース時代から将来を渇望され続けてきた大器。

サイズの大きさだけでなく、スピードにも際立ったものがあり、CBとしてもSBとしてもプレー可能な器の大きさがある。2017年からトップチームでプレーし、今年は完全にレギュラーに定着。主に右WBのポジションで連続出場を続けている。

守備のタイトさだけでなく、攻撃にも鋭さがあり(技術はそれほどないが)、シンプルにスピードで抜いて、正確なクロスを入れて見せるところに、新世代ならではの「器用さ」を感じる。

19歳とは思えぬ「熟練感」に時折忘れがちだが、まだプロとしてフルシーズンをレギュラーで過ごした経験がなく、終盤の息切れが心配ではある。

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 31 岩波拓也 DF(CB)NEW!

神戸ユースの最高傑作とも名高いCBが浦和加入。

名前の印象と異なり屈強なストッパーではなく、ビルドアップと読みの鋭さを武器に活躍するCB。タフネスさでマウリシオ、槙野、遠藤との競争に敗れサブに甘んじていたものの、遠藤の移籍をきっかけにレギュラーを掴みつつある。

1対1であっけなく負けたり、空中戦の弱さを露呈したり、ここまでの印象は決して良いわけではないのだが、レギュラー定着後は安定したプレーを続けている印象。

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46 森脇良太 DF(RB/RWB)

ボールコントロールと長短織り交ぜたパス技術に抜群のセンスを示すCB。元々はSBだったことからも分かる通りクロスの質も良好。

Mrパイナポー森脇良太も、ミシャ解任後は苦労している印象。怪我などもあったが、足元の技術が高く、元々CBとしての適性が高いとは言えない選手ながら「後方からのビルドアップが生命線」であるミシャサッカーだからこそサバイブしてきた選手でもある。故に「トランジション能力」の高さを求められる大槻→オリヴェイラ路線ではCBとしてプレーする線は薄いかもしれない。

反面足元の技術の高さを生かして、本来向いていると思われるCHに活きる場所を見出している感もあり、今後の彼の動向に期待している。というか個人的にも選手として好きなので、このまま終わってほしくはない。

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7 武富孝介 MF(OH/RMF/ST)New!

埼玉生まれ、柏下部組織育ちのアタッカー。

本職はセカンドトップないしはトップ下気味のMFなのだろうが、サイドMFも含めてそれなりにこなせる。持ち味は豊富な運動量を根幹にした精力的なランニングで、ここは湘南時代の指揮官であるチョウ・キジェも絶賛していたようだ。その特性を見るにオリヴェイラサッカーとの親和性は高そうだが、指揮官変更後にはなかなか出番に恵まれていない。重大な怪我などの情報もないので、単純にまだオリヴェイラ式が身体に沁み込んでいないのかもしれないが、武藤の負担が大きく、山田直輝不在の今、彼は必要な存在と思えるが、今後どうなのか。

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10 柏木陽介 MF(CMF/OMF)

今年からキャプテンマークを引き継いだ「浦和の太陽」。

技術力の高さをベースに浦和の攻撃のタクトを握る司令塔。足の遅さが玉にきずだが、結婚後の食生活改善でぽっちゃり体系からグッドシェイプに変化。

スピードは上がらないものの、単純な「走力」が上がった。守備は上手くはないものの、自身が空けてしまったスペースを献身的にカバーする様子をよく見る。必要だからという要因もあるのだが、相手DFの裏を狙う「一発パス」を狙いたがるクセがあり、それがミスパスになった際に自分の裏にカウンターパスを通されるシーンも多い。善し悪しなのでなんとも言えないが、もうすこしパスチョイスの精度が上がってくれたらもう一段回上のプレイヤーへと進化するような気もする。もちろん素晴らしいフットボーラーなのだが。

後半戦ではすばらしいコーナーキックでセットプレーの得点を演出。とはいえ昔から「陽介のキックは最高」と言われ続けているわけで、要は中で合わせる練習をした成果が出ているだけに過ぎないようにも思える。「全然決まらないセットプレーは柏木の責任」と言われていたりもしたわけで、ホント可哀そうだなぁと思ったりもする。

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11 クエンティン・マルティノス MF(SMF/WG)NEW!

両足を器用に使いこなす、オランダ育ちキュラソー代表のウインガー

横浜FMでは主に両サイドハーフとウイングを兼任していた。実に「ウイング大国オランダっぽい」アタッカーで、彼を招くということは、まぁ要するに3トップをやりたいのだな...というのが素人の僕にもすぐわかるチョイスであった。

「来たら思った以上に活躍した」なんてパターンが頻出するここ数年の浦和の補強だが、マルちゃんに関しては「思っていた通りのやつが来ちゃった」感じだ。これは決してポジティブなトーンではなく。

ドリブルに拘るウインガー故に独力の突破に自信があるようだが、切り替えしのパターンがワンパターン、およびスピードで振り切ろうという傾向が強すぎて、もはやJリーグでは完全に「やり方」がばれていて一人も突破できないシーンが目立つ。

唯一の利点は「マジメ」で「一生懸命走る」ことなのだが、サッカー脳が少し弱く「必要なランニング」が出来ない。一生懸命動くし、頑張るけど、結果的にそれが「実らない」。残念なプレイヤー感が顕著で、そして恐ろしいことにそれは彼が横浜でプレイしている際に私が彼に抱いていた印象そのままなのだった。Oh my....。

オリヴェイラはWBでの起用は早々に諦め、シャドーのポジションでの起用を模索中。ハーフスペースにアジリティを活かして幾度となく飛び込ませる仕事をさせているが、狭い所に入ることを厭わない性格がその仕事にはうまいことマッチングしていて、これまでよりは可能性を感じさせる。とはいえ、新加入ファブリシオがその仕事を上位互換でこなしてしまうので、なんともはや...ではあるが。

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15 長澤和輝 MF(OMF/ST/CMF)

昨年のアジア制覇に大きく貢献したガチムチトラジションファイター。八千代のバーサーカー。その力を以てしてもジェフを昇格に導けなかった男。(なんでやジェフ関係ないやろ!)

相手とのボディコンタクトを厭わず、自分よりも屈強な外国人選手たちに無表情でぶつかり、ボールを奪う。結果として異常なまでのデュエル勝率を誇った。その淡々とした仕事っぷりは若干の狂気を滲ませ、ひょっとしたら脳の大事な部分を強化手術によって除去した戦闘サイボーグなのでは?と思わされる。

現在は怪我で離脱中であるが、武藤にとっては強力なライバルであり、同時に彼が帰ってきさえすれば中盤で起きている問題の様々な要素が解決する可能性もある。それくらい今の浦和が長澤に依存する要素は思いのほか大きい。

因みにTwitterはちょっとバカおとぼけな発言が多く、やはり改造手術の影響が...。

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16 青木拓矢 MF(CMF/DMF)

中盤のバランスをとる文字通り「かじ取り役(ボランチ)」。

もはや大ベテランとなった阿部勇樹からタスクを大きく引き継ぎ、今年はレギュラーとして出場を続けている。攻守のバランスに優れ、特にボールキープに関しては特筆しており、そういう意味ではブラジルのボランチっぽさもある。現状のシステムでは柏木やマルティノスファブリシオ、それだけでなく橋岡が空けた中盤スペースを埋めるタスクが大きくのしかかって、結果的に守備的な負担が大きい印象がある。この辺りはポゼッションが上がりさえすれば解決するはずなのだが、今期中に青木を救う展開があるのかは不明。

大きくサイドを入れ替えるサイドチェンジや、果敢にバイタルエリアに飛び込む攻撃姿勢にも定評があり、更なるブレイクを期待したい。

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18 山田直輝 MF(OMF/CMF)※レンタルバック

3度の期限付き移籍延長を終え、遂に浦和に帰還した「ハート」。別名「名古屋絶対殺すマン」。

湘南でチョウ・キジェ軍曹のもと心身共に鍛え上げられ、指揮官を「サー」と呼び、目の前の敵は「即殲滅」する湘南スタイルサイボーグとして帰ってきた(一部嘘誇張がございます)。

掘体制での前半戦では全く出番が無かったが大槻体制では出番を伸ばし、ルヴァンカップ名古屋戦では浦和で久々のフルタイム出場&勝利。オリヴェイラ体制でも信頼を勝ち取り、練習試合でも一番手グループでの出場を続けていたが、なんと全治4か月の重傷。ここぞというところで怪我に見舞われる運命だけは、本当になんとかならないか。辛い。今の浦和は間違いなく直輝が輝けるチームだけに早期の復帰を望むほかない。

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22 阿部勇樹 MF(DMF/CMF/CB/RWB)

日本サッカー界に間違いなく名を刻む「鉄人」。あらゆるポジションを高いレベルでこなし「ポリバレント」とイビッツア・オシムに評された才能は36歳となった今も衰えない。流石にフルタイムでの出場は厳しく、ここ最近は途中出場がメインだが、その役割は「守備固め」にあらず。

阿部投入によって浦和には再度スイッチが入る。チーム全体の攻守バランスを引き締める。クレバーなフリーランによってボールを引き出す役割をこなすだけでなく、自らも果敢にゴールを狙う。もちろん守備ブロックの構築もお手の物。阿部が入ることで、やはり浦和は1ランク上のチームに変わる。それを見る度に僕らは阿部勇樹というフットボーラーの偉大さと彼がいることの意味を実感するのである。

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29 柴戸海 MF(DMF/CMF/RWB/CB)NEW!

明治大学からやってきた「大学屈指」のMF。「しばとかい」と読む。

セントラルなポジションが基本ポジションで、守備的なポジションであればどこでもこなせる万能性が売り。大槻体制ではRWBでも起用され、問題なくこなしていた。プレーを長時間見ることが出来ていないが、割とデュエルやインターセプトに自信のある選手なのかなーみたいなフワっとした印象。

あと目つきが怖く、彼が大槻さんに指示を受けている時は「おう、海、あの10番いっちょやったれ。なに一人前になるってことは、一回クサい飯を食うってことじゃ。遠慮なく行けや」「うす」みたいな会話が脳内に聞こえてきて困った。(何の話だ)

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38 菊池大介 MF(LWB/RWB)

 昨年加入組だがミシャ式への適応に戸惑い定位置が確保できず。堀体制になってからは幾度か出番は増えるものの、定位置確保までは届かなかった。

走力とタフネスが最大の持ち味なのだが、反面位置取りやランの質はイマイチで、どうにも序列では宇賀神からは水をあけられた印象。とはいえとにかく一生懸命走るので、「まずは頑張る」ことを要求された大槻体制ではそれなりに活躍した。

オリヴェイラ体制ではまだ出番がほぼないものの、貴重な左サイドのWBの控えとしてベンチ入りはしている感じ。

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9 武藤雄樹 FW(ST/CMF)

栄光の9番を引き継いだ、器用で技術の高いFW。

ミシャ退任の影響をつぶさに受けてしまったのは武藤だった。器用さ故に堀体制ではSHを任せられるも、それって輝いていなかった仙台時代と同じ役割なわけで、案の定良さが全て消え去った。物理的にゴールから遠のく中で抜群のゴール嗅覚すら若干鈍り、結果的にゴール数も激減した。その影響は今なお癒えず、なかなかゴール数が増えて行かない原因になっている。

オリヴェイラ体制では主にハーフスペースに飛び込む。あるいはその動きを以てスペースを作る。人が明けたスペースを埋める。或いはトランジションの起点となるなどの地味な仕事を淡々とこなし、興梠の復調に大きく貢献している。

本人の性質には合った仕事をこなしつつ、アシストを伸ばすなどその成果も着実に出ているので、ここから自身のゴール数が伸びて行けばこれ幸いである。

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12 ファブリシオ FW(ST/CF/OMF)NEW!

 ラファ・シルバ移籍と怪我で離脱のナバウトの穴を埋めるブラジレイロFW。

ポルトガルのポルティモエンセで「ドリドリマン」中島翔とコンビを組んでチーム最多得点を取ったストライカー。知っての通り元・鹿島アントラーズの選手ではあるが、その当時はどちらかというとMFとしてのプレイが多く、点取り屋として開花したのはポルトガル渡欧後だろう。

ロングカウンターからのミドルシュートでの得点パターンが多く、「そっから撃つか?」みたいなシュートを易々と決めたりすることから相当シュート力が強いのだろうという前印象はあった。しかし実際にプレーを見て感じるのは、そのポジショニングの確かさだろう。常に適切なポジションでボールを受け、捌き。特にカウンターの場面では素早いルックアップからフリーの選手を見出す能力に長けていて、これまで未遂に終わることが多かったカウンターがバッチリ決まるのは彼の存在あってこそとも思える。広島戦でJ復帰後初ゴール。続く川崎戦ではPKを決め、ここから更なるゴール量産が期待される。トータル面で間違いなく「補強」と呼べる存在。

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19 アンドリュー・ナバウト FW(ST/CF/WGNEW!

オーストラリアのニューカッスルジェッツからやってきたサッカルーズ(サッカーオーストラリア代表の愛称)にも選出されているストライカー。ジェッツでは主にウインガーとしてプレイするものの、その屈強な肉体を活かしてセンターFWでもプレー可能。実際代表チームでは主にセンターFWとしてプレーしていた。

ポストワークなどはどちらかというと不得手で、ロングカウンター時に抜群のスピードとパワーを生かしてプレーするタイプ。「上手い」という感じの選手ではないが、とにかくシンプルかつパワフルなプレーが持ち味。マジメな性格も手伝って仕事をさぼらないので、オリヴェイラ監督からの信頼も非常に篤い。

リーグ戦の川崎戦でキーパーと交錯し、怪我を負ってしまうものの執念で回復し、W杯に出場。しかしここでも負傷してしまい負傷交代。今なお復帰できていない。

彼が復活した際にどのようなスカッドになるのかは不明だが、兎にも角にも復活が待たれる選手の一人。あとブログといいTwitterというとにかく「ナイスガイ」であることが際立つ選手で、好感度がめちゃくちゃ高い。

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20 李忠成 FW(ST/CF)

スピードと技術、トータルバランスに秀でたオールマイティなFW。

今年は難しい立ち位置にいる。コンディションは決して悪くないものの、ライバルが多く途中出場が続いている。しかしチーム内の誰よりもマジメで真摯な人柄が伝わるように、決して腐らず、自らの役割をこなしている姿を見るに、「プロフェッショナル」という言葉が似合う選手だと感じる。

ここ数試合ではスーパーサブ的な起用がバッチリ嵌り、相手が疲れてきた時間に敵陣をスピードで引っ掻き回す役割を担っている。川崎戦では粘りが実ってのPK獲得。劣勢の中で止めを刺す2点目を生む要因となった。

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21 ズラタン・リュビヤンキッチ FW(CF/ST)

屈強な肉体とスピード生かしたプレーに定評のある、元スロベニア代表FW。

序盤は出番があったものの、オリヴェイラ体制になってから出番が露骨に激減している。外国人枠の関係で一人がベンチ外になるのは仕方ないにせよ、マルティノスよりも序列が下なのか....と思うとなんともいえない気持ちになる瞬間もある。夏にはお別れ?と思ったがそういった様子が見えないのもなんとも。

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30 興梠慎三 FW(CF/ST)

柔らかい肉体、確かなポストワーク、ゴールへの衰えぬ嗅覚。押しも押されぬ「浦和のエース」。

序盤は堀式に苦しむも、レギュラーを渡す機会はほぼなし。オリヴェイラ体制でもCFの座を守り、8月で既に2ケタ得点を達成。パトリックを猛追している。

ポストワークの重責から解放されたことで、ライン際の駆け引きに集中できている印象があり、より職人的なゴールが増えている。

また、自身の為だけではなく、味方の為にスペースを生み、常にチームの為に尽くし続けるこの男は浦和最大のアイドルであり続ける。

ちなみに「こうろぎ」でなくて「こうろき」ですので!!

あと、チャントのメロディーは「ナナナーナ!」ですので!!お願いだから歌う時に直して!!

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■ オズワルド・オリヴェイラ 監督

オズの魔法使い」の名前に偽りなし。

短期間で可能な修正をしっかりと施し、後半戦の好調を生み出している。形に拘らずチームが一番力を出せる組み合わせを重視する姿勢もさすが「勝負師」。なんだろう、今までこういう本当の「職人」監督が浦和にいたことがほとんど無いから、ありがたい反面ちょっと怖い。

鹿島時代には「ハイプレスサッカー」に拘っていたとのことで、まだその理想が形にはなっていない。恐らくまずは今季をサバイブした上で、来季以降その取組が始まるはず。

以前からしつこく言っているが、さいたまスタジアムとハイプレスサッカーの相性は抜群に良いはずで、ひょっとしたら浦和の「熱さ」すらも蘇る可能性がある。

何はともあれ、この監督についていきたい!と思わせるカリスマの持ち主である。

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ということで今年の選手名鑑でした!!

よっしゃー!これで後半は浦和も巻き返しやでー!!!

またなんかの記事でお会いしましょう!!ほな!!!

浦和レッズあるある

浦和レッズあるある

 

 

シナリオ優先で個人的におススメしてみたいゲーム(18禁)という雑談。

 

※タイトルから明らかな通りそういうゲームを扱う記事です。とはいえ、直接的なリンクや表現・画像などは含みませんのでそこはご安心ください(あくまでシナリオメインの記事になりますので)。ですが、扱う題材は18禁ゲームですので、予めご了承のうえご一読くださいませ。

 

この間、久々にTwitterで「Fate記事」をピックアップさせて頂いたところ、思いのほか反響がありまして。

記事はあくまでも「Fate」の話だったのですけども、その中で当時の「エロゲ界のクリエイター」が今の「オタクカルチャー」とも関わりが深いという話をサブテキスト的にさせていただきました。

そのあたりを「面白い」と感じて下さる方もいらっしゃって。

思えば「Fate」の発売が2004年。今から14年前ということは、仮に現在20歳の方がいて当時は6才なわけで。そりゃピンと来ないし、面白いと思うのかもなぁとも思ったり。

ということで、今回はその派生として今の数倍「痺れる業界」だった当時の「エロゲ作品」の中で(00年代初頭)、自分がプレイしたもので、今でもおススメできる作品を数点ピックアップしてみようと思います。

はてなblogですので、レギュレーション等もございます。故に直接的なリンクなんかは貼れないと思いますので、もし興味ある作品があったらDMMとかで検索して購入頂ければと思います(一応DMMでの参考価格なんかは貼らせて頂きますね)。

※補足

今回チョイスしている作品はあくまでも「入門編」に近いものです。初めて遊ぶ方でも抵抗なく遊べる作品に絞らさせて頂いております。それ故に「クセが強かった」り「エグイ」作品は敢えてチョイスから外しています。予めご了承願います。またあくまでも「私が好きでおススメしたい作品」とさせて頂いております。個人的な見解なので「あの作品がない!」などのご指摘もご容赦願います。

 

ではサクっと参りましょうか。

 

Fate/Stay night(2004年)

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あらすじ:

伝奇活劇ビジュアルノベルゲーム。7人の魔術師、7騎の使い魔、生き残るのは、ただ一組。手にした者の願いを叶えるという「聖杯」。その聖杯を実現させるため、一つの儀式が行われようとしていた。聖杯に選ばれた七人の魔術師(マスター)には、聖杯が選んだ七騎の使い魔(サーヴァント)を与えられる。「騎士(セイバー)」「槍兵(ランサー)」「弓兵(アーチャー)」「騎兵(ライダー)」「魔術師(キャスター)」「暗殺者(アサシン)」「狂戦士(バーサーカー)」。マスターはこの七つの役割(クラス)を被った使い魔一人と契約し、自らが聖杯に相応しい事を証明しなければならない。つまり、マスターとなった者は、他のマスターを消去して「自身こそ最強」だと示さなければならないのだ。聖杯を求める行いは、その全てが「聖杯戦争」と呼ばれる。この地に起きる儀式は、その名に恥じない「殺し合い」といえるだろう・・・。

www.youtube.com

 おススメコメント:

 本記事の発端となった本作をまずはご紹介しよう。

シナリオライター奈須きのこ、原画:武内崇

この二名のクリエイターが軸となって発足した同人サークル「TYPE-MOON」の商業デビュー作となる作品...などという概要はまぁ前回の記事でも触れたので省略。

ゲームとしては非常にベーシックな(言ってしまえば今となっては古めかしい)ビジュアルノベル

7人のマスターと7人のサーヴァントによる「聖杯戦争」という「殺し合い」。その「非日常」に呑み込まれていく衛宮士郎という少年を主人公とした物語。

いわば少年漫画としてもとても「ありがち」な内容ながら、そこに「18禁ゲーム」ならではのしっかりとした「味付け」を施したことで、独特の「エグみ」をプラス。それによって「ベーシックな内容」を見事に「現代的な作品」にアップデートしてみせ、00年代の業界を代表する作品となった。

本作のキモは「ゲーム的な部分」ではなく、やはりプレイするごとに広がる「シナリオ」にあるのだろう。

一番最初にプレイすることになるであろう、セイバーをヒロインとする「Fate」ルート。続いて解放される遠坂凛をヒロインとする「Unlimited brade works(通称UBW)」ルート。最後に解放される間桐桜をヒロインとする「Heavens Feel(通称HF)」ルート。

解放されていくたびに明らかになる「Fate」という物語の真相。「聖杯戦争」の真実。キャラクターそれぞれの思惑。そして衛宮士郎という人の「背景」。

そして、物語が進むたびに「エグさ」を増していく、苛烈なシナリオ。

今なお本作の劇場版新作が公開されている現状を見ても、シナリオ自体が「古びていない」ことは明確。やはりFateを語る上で、そのシナリオの「素晴らしさ」に触れないわけにはいくまい。

現在はFGOから入ったファンも多く、意外なことに原点となる本作を未プレイという方も多いとのこと。確かにプレイするには、まぁまぁハードルも高く、プレイ時間も長いのですが、Fateの基礎は間違いなくここにある。

シリーズそのものをじっくりと楽しみ、理解するうえで是非とも一度プレイしてほしい作品。

 

おススメシナリオ:

現在第3章にあたる「Hevens Feel」の物語が劇場公開中だが、やはり個人的には第2章「Unlimited brade works」を推したい。

Fate」という物語における様々な謎が一旦解決されるだけでなく、主人公=士郎にとっても一つの「解」が与えられる物語。「Fate」において最も「王道」と呼んで差支えない物語で、入門編としても一番良い。

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士郎とヒロイン=凛との関係性だけでなく、士郎と「アーチャー」との関わりがピックアップされる物語。その中では心震わせる「熱い物語」が展開される。もはや「エロゲ」という枠を完全に乗り越えた「少年マンガ」的に痺れる展開は、きっと誰しもが楽しめるはずだ。

現在AmazonプライムではUfotable製作のアニメ版が視聴可能。こちらもかなり忠実なアニメ化なので、おススメしたい。

UBW」でピックアップされるヒロイン遠坂凛はいわゆる「ツンデレ系」ヒロイン。

誰もが憧れる容姿と性格の良さで「学園のマドンナ」でもあるのだが、それは猫を被った姿。仲良くなると途端にツンデレ要素をむき出しにしてくる。というのは、まぁツンデレヒロインの王道なのだが、同時によくツボを心得ている。

ヒロイン要素だけでなく、キャラクターとしての遠坂凛もとても魅力的。

古くからの魔術師の家系ゆえに「アナログ至上主義者」であり、致命的なまでの機械音痴。また基本的には能力が高いのにやたらと「うっかりミス」をする...など「隙の多さ」を抱える所も彼女の魅力。

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そんな「冬木のあかいあくま」の魅力にも是非触れて頂きたい。

因みにファンディスクとして後日譚(?)であるhollow ataraxia」という作品もある。こちらは必修というわけではないが、Fateシリーズにおける小ネタなど(アヴェンジャー、バゼット・フラガ・マクレミッツカレン・オルテンシアなどはここが初出)を理解するためにはやはり必須であり、余裕があれば遊んでいただきたいところ。

参考価格:

DMMでのDL販売はなし。

Amazonでは初回版の新品はなんと3万円超えというプレミア価格。

通常廉価版でも8000円前後。製品状態に拘りが無ければ中古ショップで購入するのをおすすめする。恐らく4000円前後で購入できると思われる。

hollow ataraxia」は初回盤、通常版ともに新品は1万円超え。こちらも中古では3000円前後で購入できるので、中古をおススメしたいところ。

なお「stay night」と「hollow atraxia」の同梱版となる「セット」もあるようだが、3万円とかするぜ。うむ。

両作ともに全年齢版ではPS Vita版などもある。

ぶっちゃけエロ要素はあってもなくても同じなので、そちらでも問題は無いと思う。

 

■家族計画(2001年)

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あらすじ:

擬似家族との絆を描いた18禁ハートフルホームコメディAVG。家族の温もりを知らずに孤独に育ってきた主人公は、ある日行き倒れの少女を発見し、面倒を見ることになってしまった。それをきっかけに、元社長令嬢、同級生、バツイチ美女など次々に身寄りのない人々が現れ、彼らと擬似家族として共同生活を始めることになる。原画を福永ユミ、シナリオを山田一、音楽をI’veが担当。


Family Project OP

 

おススメコメント:

ハートフルホームコメディ???(注:あらすじ内紹介文)

ま、確かにコメディではある。だが日本的な文脈の「コメディ」には当たらないのではなかろうか...。

人類は衰退しましたラノベ界においても堂々たる存在感を示した田中ロミオ氏。氏がまだ山田一というペンネームを使用していた時代の代表作である。

「加奈~妹~」によって、業界に「泣きゲー」旋風を巻き起こすきっかけを生み出した氏の新たな一手は、「ハートフルホームコメディ」の体を装った「社会派ホームコメディ」であった。

「行き倒れのチャイニーズ少女」を拾ってしまったことから、なし崩しに「疑似家族計画」へと引きずり込まれていく主人公。その計画の中で産まれる人間関係から、次第に明らかになっていく「計画に参加した人々」のバックボーン。

「社会」という名の「コミュニティ」にどこか居辛さを感じている者。自分の責任とは無関係の「抑圧」を受けている者。そしてその「抑圧を強いてしまった者」。それだけではなくって、そういった個人の事情だけではどうにもならない「社会」や「世界」そのものの「歪み」にも目を向け、それでも真っ直ぐに前を向いて進んでいく人々を「賞賛」し「祝福」する物語でもある。

この業界にツワモノのクリエイターが集うきっかけとなった作品でもあり、「知る人ぞ知る」名作でもあるだけに、是非一度プレイしてほしい作品である。

なお、シナリオにはそれなりに善し悪しはあって、どのルートも完璧とは言い難い。まぁそこも味と思って受け入れては頂きたいところ。

 

おススメシナリオ:

おススメシナリオとなると自然と「誰かのルート」の話になるのだが、ここは高屋敷青葉をチョイスしたい。

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疑似家族内では「長女」役となる彼女。元々はどこぞのご令嬢とのことなのだが、とにかく「キツイ」の一言である。

黒髪・黒目・全身真っ黒な服装のため、主人公からは「魔女」呼ばわりされたりするわけだが、その要因の一つは息を吐くようにぶつけてくる「罵詈雑言」にあったりする。

言う言葉がどれも臓腑を抉る呪詛のよう。その語彙の豊富さにも恐れ入るが、それを適格にクリティカルヒットさせにくるワードチョイスも恐れ入る。まさに悪魔のような女である(褒めてる)。

そんな彼女が抱える「過去」もまた、なんとも「苛烈」の一言。シナリオを追うたびに明らかになっていく「事実」を知った時、恐らくこのゲームのタイトルにある「家族」について深く考えることになるはずだ。

 

例外的にもう一人どうしても触れておきたいのが、末妹役となる高屋敷末莉である。

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実質ホー〇レス化していたところを拾われた彼女。バックーボーンもとんでもなく「苛烈」で、「悲惨」な状況にある登場人物の中でも極めて「悲惨」な人物でもある(本人が前向きだけに一層悲壮感が増す)。

一応ゲーム的には彼女が正ヒロインということもあり(それってどうなのだ?とも思うが)彼女のシナリオもまた独特で面白い。「笑って泣けて感動できる」という意味では彼女に軍配が上がるのではなかろうか。

余談だが、それまで全くのストレートだったプレイヤーを、いわゆるロリコン」として開花させた狂気のシナリオの持ち主と当時はよく言われたキャラでもある。なんともはやギルティ。

 

参考価格:

一時はプレミアソフト化した時期もあったが現在はDMMでDL配信中。ありがたい時代である。

数パターン出ているが、おススメは「家族計画~追憶~」。リメイク版も出ているがやはり福永さんの絵で楽しんでいただきたいところ。こちらは4937円とお求めやすい価格帯に。

因みに「家族計画~そしてまた家族計画を~」という後日譚もある。こちらは3394円。シナリオボリューム的にはそれほどなので、作品自体を気に入ったら購入で良いと思う。

なおDMM限定なのか「山田一アーカイブス」なるものも配信されている。前段にて触れた「加奈~妹~」だけでなくこちらも名作の誉れ高い星空ぷらねっとも含まれている。

 

カナリア(2000年)

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あらすじ:

この物語は、主人公・八朔洋平(ほずみようへい)が親の都合により、四国の香川県へ引っ越したことから始まる。
叔父の経営するスタジオで偶然出逢った女の子に惹かれ、転校先で軽音楽部に入部した洋平は、3ヶ月後に控えた学園祭でのライブの成功を目指す。新しい生活の始まった彼には、新しい出逢いと、その数だけの物語が待っている。

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おススメコメント:

ある日業界に「フワッ」と現れた新興メーカーフロントウィング。彼らのデビュー作がカナリア~この想いを歌に載せて~」である。

ストーリーとしては地方(四国)に引っ越してきた男子高校生が、美少女及びバンド音楽と出会い青春を駆け抜けていくという非常にオーソドックスなジュブナイルものなのだが、シナリオ担当者が尖っていた

複数名による共作シナリオなのだが、担当者の一人が桑島由一氏。後に「神様家族」などを手掛けることになる方で、軽妙なキャラ同士の掛け合いとギャグ描写が抜群に上手いライターさんである。(筆者は桑島氏をかなり信奉している)

もう一人はヤマグチノボル氏。後に知る人ぞ知るゼロの使い魔を生み出した方。

ゼロの使い魔が発刊された時、ヤマグチノボルという名前を見て驚いた人は多かったはずだ)

原画家片倉真二を含め、それまでの業界にいなかった「フレッシュ」な陣容から生み出された作品がこの「カナリア」なのである。

特徴はやはり「キャラ同士の会話の楽しさ」。

普通の会話シーンがとにかく「楽しい」のでついつい読まされてしまうシナリオ。独特な個性を持ち、それを如何なく発揮してくるキャラクター。特に「男性キャラ」にも手を抜かない作り込みは素晴らしく、この系譜は後継作となるグリーングリーンで更に開花することになる。

しかし、そんな暖かい雰囲気を一変させる「とんでもない展開」もこの作品の持ち味。「なんでそんなことに!?」と驚かされることも多数で、これもまたこの時代ならではでもある。(そしてそのシナリオの意外性もまた「グリーングリーン」へ引き継がれていくのであった...)

また、「音楽」の素晴らしさも特徴の一つ。オリジナル楽曲のどれもがクオリティが高く、音楽の素晴らしさを評価するユーザーも多い。

因みにCV勢もとにかく豪華。彼女達の演技の素晴らしさを感じるには、実はDC版発売後に出た「ドラマCD」がとてもおススメ。

シナリオの超絶面白さと、CV陣の演技の素晴らしさがかみ合って、最高に笑える一品になっております。

若き日の堀江由衣さんもゲストキャラで出てるんですよ(ぼそっ)。

 

■おススメシナリオ

正直に言おう。シナリオとして格段好きなものは無かったりする。けれども全体のバランスの良さを鑑みて「やってみてほしい」とは思える。要は個別シナリオというよりも全体の構成が良い作品といえる。

敢えてピックアップするのならヒロインである佐伯綾菜だろうか。

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真面目でやさしく、抜けたところもあるおトボケヒロイン。

とにかく可愛らしいキャラなのだけど、シナリオが意外な展開を迎えて、色んな意味で唸らされるはず。

彼女のイメージソングである「シールド」が凄く良い曲なので、とにかく聞いてほしい。

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またドラマCD版では彼女を演じる満仲由紀子さんの名演もあって、とにかく愛すべきキャラとしての綾菜を感じられるはず。

参考価格:

DMMにてDL版販売中。価格は税込み3024円。とかなりお手頃。

パッケージ版は廃盤になってしまっているようですが、中古市場では購入できそう。ただ現在のPCスペックでは遊べないかも。

 

つよきす(2005年)

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あらすじ:

私立の学園に通う主人公・対馬レオは2年生。 初夏のある日、家に幼い頃姉代わりだった 従姉弟の鉄乙女(くろがね おとめ)が引っ越してくる。 乙女は、自分達の長期出張にかこつけてなまけている息子の 性根を叩き直して欲しいと両親に頼まれ、家にやってきたのだった。 さらに乙女は、生徒会の仕事を主人公に手伝って欲しいともちかける。 そこは主人公が想いを寄せる生徒会長・霧夜エリカが取り仕切る 女帝政治の場所であった。幼馴染の蟹沢きぬ達を巻き込んで 平凡だった日々が波乱へと代わっていく……。

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おススメコメント

2005年にきゃんでぃそふとから発表されたつよきす

「姉、ちゃんとしようよっ!」でその才能に注目されていたシナリオライタータカヒロ氏の評価を決定的にした作品でもある。

当時固定化されつつあった「ツンデレ」という概念。この作品はその「ツンデレ要素」にひたすらこだわり抜いた作品である。(とはいったものの製作者であるタカヒロ氏はこのゲームのジャンルを「強気っ娘」と言って譲らなかったけども)

このゲームの特長はとにかく「楽しい」ことに尽きる。

このジャンルで「面白い作品」を聞かれたら、私はまず真っ先に「つよきす」をおススメする。それくらい万人向けであり「楽しい」作品に仕上がっている。

さきほどの「カナリア」もそうだが、とにかく会話の全てが楽しい。それだけでなく会話シーンに抜かりがない。単純な読み物としてのエンタメ性がズバ抜けている。なにより上で紹介しているOPムービーに入るまでに膨大な量の前日譚が入るのだから恐れ入る。(もちろんその前日譚が面白い。因みに当時この前日譚をまるまる体験版として配信していたのだ。凄いでしょ?)

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楽しさを補てんする要素にも抜かりがない。

まずゲームシステムが非常に快適。台詞に併せて動き回るキャラクターを見ていると「紙芝居」と揶揄されたジャンルのゲームとは思えない。

SAVE・LOAD含めたシステム面も非常にユーザーライク。2周目以降はOPムービーまでのスキップ機能が付いたりする。

ゲームのチュートリアルにも数パターンが用意されている。ゲームを終わる時には特別音声が数十パターン用意されている。どうこれ、恐ろしい熱意じゃない?

サブキャラクターの声優陣の豪華さも恐れ入る。もちろん仮名での起用になっているが、アニメやゲームが好きな人なら声を聞いた瞬間に「誰」だか分かる凄いメンバーが出演している。(これは後の作品でも伝統芸となっていく)

サブキャラの造形自体が面白い。忘れられない「良いキャラ」が沢山出てくる映画は愛すべき映画になりがちだが、ゲームにおいても同じであることが理解できる。

とにかく「面白い」ことをやるための「妥協」がなく、それらを全力で詰め込んだ「おもちゃ箱」みたいな作品。それが「つよきす」である。

 

■おススメシナリオ

正直なところどのヒロインもおススメなのだが、やはり幼馴染蟹沢きぬをチョイスしたい。

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通称「カニ」。主人公対馬レオにとっては幼馴染。見た目はロリそのものだが、中身は野性味あふれるワイルドな性格。とにかく野獣のようなやつで、誰彼かまわず噛みつく。とはいえクレイジーなだけでなく、本能的な知性を持ち合わせていて、クセ者だらけのキャラの中でも非常に「常識人」な一面もある。

友情に熱く、幼馴染を傷つけるやつには容赦しない。兎にも角にも好感度が高いキャラである。

そんな彼女との「恋愛」って??と思われるだろうが、予想もつかない展開を見せてくれるので、これまた必見である。

因みにヒロインとは関係ないがこのゲームの人気を高めた最大の要因が、幼馴染の一人:鮫氷新一(通称フカヒレである。

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見た目も中身も本当の「ダメ人間」であるこのキャラを、某世界的人気なボール集めちゃうアニメの、某エリート王子役の声優さんが全力で演じているのである。恐ろしいでしょ?

彼の活躍を楽しむだけでもこの作品は最高に楽しめるので、今回取り上げた中でも極めておススメの一本でもあります。

あと実は「ヤンデレ」という概念を語る上で非常に重要なキャラクターも登場する。そういう意味でもエポックメイキングな作品なのだ。

 

■参考価格

DMMでDL版販売中。ですが7344円とほぼフルプライス。さすが人気作。タイトルと同じく強気な値段設定ですな。

中古であればAmazon3500円前後。ここが常識的かも。

因みに後継作が数多と出ているが、タカヒロ氏が深くかかわっているのは1作目のみ。氏の作品が好きな方で他にも色々やってみたいと思ったら、「みなとそふと」の作品に移っていくと良い。

 

この青空に約束を(2006年)

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あらすじ:

島が舞台のハートフル学園18禁AVG。本州から少し南にある離島。坂の多い島のふもとからずっと続く石段を登りきると、下の町や海まで一望できる高台になっておりその高台の上に主人公・星野航たちの通う学園がある。しかし島の産業の大部分を占めていた大企業の工場が来年撤退することになり、学生の数は次第に減少していた。島にあるもう一つの高台の上に学園の旧校舎を改装した寮がある。寮生の減少にともない現在は主人公とヒロインたちのみが住んでいるその寮は、島の住人からは主人公のハーレムだと噂されている。そんな寮になぜかこの時期にやってきた転校生も巻き込み、時には反発したりしながらもドタバタと楽しい毎日を過ごしていく。原画はねこにゃん、シナリオは丸戸史明with企画屋、主題歌はI’ve soundが担当。

www.youtube.com

 

おススメコメント:

 丸戸史明である。

誰?とお思いだろうが、シナリオライターである。

この青空に約束をを生み出したシナリオライターである。

それだけではない「Ripple」を、「ままらぶ」を、「FOLKLORE JAM」を、「ショコラ」を、パルフェを、「世界で一番NG(ダメ)な恋」を、WHITE ALBUM2を、そして冴えない彼女の育て方を世に産み落とした人物である。

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そのどれもが傑作であり、名作

つまり僕にとっての神is丸戸史明。なのである(錯乱)。

ちょっとどうかしてしまったけども、やはり僕にとって丸戸氏は特別なライター。

僕がこのジャンルにハマり込む原因となった方でもある。

もちろん全ての作品をおススメしたいのだけど、それはまた別の機会として、今回はこの青空に約束を(通称こんにゃく)」の話をしよう。

作品としてはこれまたオーソドックスなジュブナイルもの。とはいえ普通と違うのは、主人公は元よりほとんどのヒロインと「幼馴染である」ということ。そこに一人の「ヒロイン候補」が転校してくることから物語が動き出す...という意味ではちょっと視点が違うのも特徴。

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とはいえ基本的にはオーソドックスな物語を、丸戸史明なりのアレンジで表現していくことで、本作はとても魅力的な物語に変わっていく。

丸戸史明作品の特徴はとにかく「丁寧」な作り。

登場人物の設定、舞台設計からがっちり作り込む。それ故に登場人物の多くが「実在の人間」と同じように「複雑な性格」をしているにも関わらず、物語上では「破たんが起きない」ようになっている。

あらゆるルートで会話や物語に矛盾が発生しないように作り込まれたシナリオはまさに圧巻。そして組み込まれた「伏線」の多さと、その「伏線」の「鮮やかな回収」も素晴らしい。

そして更に凄いのは、そういった凄まじい仕事を「分かりやすく」見せるわけではなく、「違和感なく作品に落とし込んでいく」所。凄い手の込んだ料理なのに、パっと見それが分からない。でも食べた人には必ず分かる凄腕料理人の一品みたいなゲーム。それが「この青空に約束を」なのである。

さすが「企画屋」というプロの脚本家チーム所属だけあって「職人」なのである。

とはいえただの「職人」ではなく、氏独自の「こだわり」があって、それを探すのが氏の作品を追いかける面での「楽しみ」だったりする。

丸戸作品には表だって登場する「ヒロイン」と、氏が独自に設定している「正ヒロイン(丸戸ヒロイン)」がおり、そのルートは他ルートよりも更に凝ったつくりになっている。それをあらかじめ予想しながら、プレイ順番を決めていくのも丸戸作品の楽しみ方。

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本作は2006年度の「美少女ゲームアワード」において、大賞受賞作品(シナリオ賞、主題歌賞、純愛系作品賞、ユーザー支持賞も受賞)となった作品。まずはプレイしていただければその「面白さ」を実感してもらえると思う。

※ちなみにこの作品もコンシューマー移植版があるが、凄まじいシナリオ改変が為されているのでとにかくおススメしない。

 

■おススメシナリオ

※最初は個別シナリオの推しを書かなかったのだけど、追記する。

どのヒロインも魅力的だが、個人的な推しは桐島 沙衣里だ。

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学校の先生ではあるのだけど、舐められ通しのダメな大人。

丸戸史明はキャラメイクの天才だけども、ことこういう「ダメな女」を可愛く描かせたら右に出るものがいない。

とりあえず丸戸作品の「個性」とも言えるキャラなので、ピックアップさせて頂いた。

 

そして、個別シナリオに関わらず、この作品で最も推したいのはトゥルールートである「約束の日」である。

どのルートとも別の選択肢をすることで進む「可能性」の物語。そこでは「この青空に約束を」という物語の本当の「結末」が描かれる。

選んだ道の中で辿る「戦い」。そこで掴み取るほんのちょっとの「勝利」。それを共に讃える「仲間」。そして「約束」の意味。

作品を楽しみ、愛した人にとっては絶対に忘れられない物語がここにはある。

作品をしゃぶりつくしたものしかたどり着けないルートだけに、是非実際に遊んで、体験していただきたい。

ちなみにアニメ化したとかしてないとかいう噂もあるけど、「この青空に約束を」のアニメ版などありません(真顔)。

 

■参考価格

DMMでのDL販売はなし。2013年の新装版は定価ベースでの販売(8624円)とお高い。まぁ名作なので致し方なし。

Amazonでは6984円なのでこちらのが可。恐らく中古価格でもそこまでディスカウントされていない可能性もあり、不朽の名作と呼ぶに相応しい佇まいである。

因みに一時凄まじいレア商品になっていたファンディスクである「フォセット」は、今は定価で購入可能(6300円くらい)。あくまでもファンディスクなので、中古で買えば十分な商品である。

 

...ということで「触れやすく」確実に「面白い」作品を5タイトルピックアップしてみましたがいかがでしょうか。

もちろんPCを持っていないと遊べないという意味でも、18禁という意味でもそれなりのハードルがあると思うのですが、もしもこのジャンルに少し興味のある方ならばやって損しないタイトルを選んだつもりです。

是非触れてみて頂ければと思います。よろしくです。

 お付き合いいただきありがとうございました!

 なにこれ読みたい。

ぼんやり映画感想:救いもない、赦しもない、ただ解はある。「MANCHESTER BY THE SEA(マンチェスター・バイ・ザ・シー)」(ネタバレあり)

※本文にはネタバレが含まれます。必ず映画を視聴した後か、あるいはネタバレOKの方のみお読みください。

どうしても見たい映画の一本だった「マンチェスター・バイ・ザ・シー」を見てきたので、雑ではありますが、感想を残しておこうと思います。

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※日本版のポスターはやたらと情報量が多くて、ゴチャゴチャし過ぎ。静かな映画に対してあのポスターは合わないと思います(まぁ、あれくらい乗っけないと人来ないのかもしれないですけど)

解説:

ジェシー・ジェームズの暗殺」「インターステラー」のケイシー・アフレックが主演し、心を閉ざして孤独に生きる男が、兄の死をきっかけに故郷に戻り、甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく姿を描いたヒューマンドラマ。「ギャング・オブ・ニューヨーク」の脚本で知られるケネス・ロナーガンが監督・脚本を務め、第89回アカデミー賞では作品賞ほか6部門にノミネート。アフレックが主演男優賞、ロナーガン監督が脚本賞を受賞した。プロデューサーにマット・デイモン、主人公の元妻役で「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、兄役で「キャロル」のカイル・チャンドラーが共演。アメリカ、ボストン郊外で便利屋として生計を立てるリーは、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去の悲劇と向き合うことでもあった。(映画.comより抜粋)


アカデミー主演男優賞受賞『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編

www.manchesterbythesea.jp

 

感想:

製作マット・デイモンで、本来が彼が主演も務める予定となっていた本作。諸々の事情により主演を下りることになった彼が後任として指名したのは、親友であるベン・アフレックの弟=ケイシー・アフレック。「この映画をきっかけに不遇な境遇に別れを告げてほしい」。そんなマットの熱い友情が実を結んだだけでなく、作品としても高い評価を得た本作。アカデミー賞では6部門にノミネートされ、脚本賞主演男優賞を受賞しました。特に前段のような事情で主演を任されたケイシー・アフレックの受賞コメントには、多くのアカデミー会員たちがスタンディングオベーションでこたえていたのが印象的でしたね。

そんなわけで公開前から割と話題だった「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ですが、やはり日本公開ではパンチが足りないのか、現在都内での公開は恵比寿ガーデンシネマと有楽町ヒューマントラストシネマのみ。公開規模の小ささは寂しい限りですが、映画の内容的にも「万民向け」とは言いづらいところもあって、致し方なしでしょうか。

私は恵比寿で拝見しましたが、客席は8割方埋まっているなど、なかなか好評な様子でした(公開が2館だけだからというのを差し引いても)。

 

ケイシー・アフレック演じるリーの佇まい。

映画はケイシー・アフレック演じるリーという男が雪かきをしている...というなんともぼんやりしたシーンから始まります。その後彼がどんな仕事をして生計を立てているのかが散発的に描かれるのですが、そこでの彼の様子が少し変。会話には生気がなく、目も虚ろ。パッと見ただけで「何か問題を抱えている」ことが分かります。

とはいえ、それは分かりやすい「不自然さ」ではなく、あくまでも社会に「適応した」うえで、その社会に「居場所がない」ような異物感。そのバランスを保った佇まいに、ケイシー・アフレックがこの役にかける気合が伝わってきます。

物語の主役はこのリー。彼が抱える問題とそのあらましが物語が進むにつれ明らかになっていく構造になっています。

 

■静かでゆっくりとした時間経過

兄の訃報を受けて地元に帰るにことになるリー。彼の地元が「マンチェスター・バイ・ザ・シー」という都市であることがここで初めて分かります。この静かな田舎町は、ボストン市民にとっての静養所となっている場所。どこかのどかな雰囲気があります。物語もそんな街の雰囲気に倣ってか、どこかゆっくりと進んでいきます。映画開始からかなり時間が経過しても、目に見える事件は起きません。ただこの町でのリーと甥っ子のパトリック、その周りの人々の日常が淡々と描かれていくのです。もしかしたら人によってはこの「何も起きない時間経過」が辛さを感じる要因になるかもしれません。

 

■継続する緊張感

一件静かに見える物語。しかし合間合間に挟み込まれるリーの「フラッシュバック」が物語に対する没入感を失わせません。彼自身が回想する「過去の自分」を見る限り、リーは元々「明るい性格」の人物でした。家族との関係も良好な「普通」の父親だったはずのリー。そんな彼がなぜ「現在の人柄になってしまったのか」。そのきっかけとなる「事件」がジワジワと明かされていくこともあって、物語は常に緊張感を保っています。

また、リー自身の「不安定さ」も、我々に緊張感を強います。酒場では誰彼かまわず喧嘩をふっかけるリー。彼は「他人からの視線」や「陰口」に酷く怯えています。また長らく会っていなかった甥っ子であるパトリックの「後見人」を務めることになったことも、彼を精神的に追い詰めていきます。

「不安定」なリーがいつ「爆発する」かは誰にも予見できません。だからこそ、リーが画面に映っている間、我々は常に緊張を強いられることになります。(実際リーが突如として”キレる”シーンも何度か挿入されます)

この「緊張感」は計算された演出のように思います。物語の中心テーマとしてある「ほんの些細なきまぐれや不注意が人生を狂わせる」ということを象徴させるようなモチーフが、ところどころに登場するからです。その際たるものが「車」であるように思います。

 

■多用される「車内」映像

本作で印象的なもののひとつが「車内」映像の多さです。田舎故に「車」での移動がマスト、自然と「車内」での会話シーンが増えるのは仕方ない部分もありますが、とはいえその登場回数の多さは群を抜いています。パトリックと共に最初に病院に向かうシーンでは、ちょっとした言葉の行き違いからパトリックが車を下りる瞬間に車を発車させようとして、あわや事故に!というシーンがあるように、「リーの不安定さ」は「車の運転」にも如実に現れています。

とかく急発進や急ブレーキを使用したり、よそ見運転をしたりする彼の運転を間近で見せられることは「もしかしたらいつか車で大事故が起きるのでは?」という想像を働かされます。(結果としてこれはミスリードに終わりますが)

先ほども触れた「ほんの些細なきまぐれや不注意が人生を狂わせる」というテーマ。その中には「車の運転ミスによる過失事故」というものも含まれます。監督の前作「マーガレット」では、「それ」が「物語の起点」になることを考えても、この執拗な「車」映像の多用も意図的なものでは?と思えます。

 

■赦しではなく、断罪されたい男。

自身の「うっかり」ミスによって、信じられない「大参事」を引き起こしてしまったリー。彼の「心が壊れてしまった」のは、そのことがきっかけでした。しかし「うっかり」ミスだったことで、彼は「罪に問われず」結果として「誰からも罪に対する裁きを受けられない状況」になってしまったことが、物語中盤に明かされます。

自殺してしまいたいほどの「罪」を抱えながら、彼が自殺できないのは、恐らく自殺すら「自らに赦しを与える行為」だと考えてしまっているからではないでしょうか。それほどに彼の心に巣食う闇は深く、重いものです。

物語終盤。ある重要人物から「赦し」を得るリー。しかし彼はそれを全くもって受け止めきれません。彼が欲しいのは「赦し」ではなく、「断罪」なのです。強いて言うのなら「断罪」のみが彼にとっての「赦し」になるのです。しかし、それを与えてくれる存在は、今はどこにもいません。

 

■兄が与えた「断罪」

ここでふと思ったのは、兄がリーに残した遺言とは、「赦し」ではなく「断罪」だったのではということです。不治の病に侵され、余命5~10年と診断されていた兄。彼がリーに全く相談することなく、自身の息子の後見人にリーを据えたのは、彼を「罪を背負った街」である「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に引き戻し、改めて「罪と向き合う時間」を作らせる為だったのではと思えるのです。

彼にとって「他者からの赦し」は真の意味での「赦し」にはならない。彼にとって大事なのは、「自分の罪」と向き合い「自分自身を断罪」し「自分自身を赦すこと」なのだと兄は気づいていた。だからこそ、彼をこの街に引き戻す方法を算段した。そんな風に思えて仕方ないのです。

 

■救いもない、赦しもない、ただ「解」はある。

映画は最後に至るまで、リーに分かりやすい形での「赦し」は与えません。ただし、自らの「罪」と向き合ったことで、彼は改めて自分自身の「傷」が癒えないことを自覚し、その上でほんの少しだけ「前に進むこと」が出来るようになります。

その「解」が「新しい家」であり、そこに甥っ子であるパトリックが「遊びに来る部屋を用意する」ことでもあります。

「人生はオペラではない」これは監督の前作「マーガレット」の中で使用された台詞とのことですが、

(詳しくは下記にて町山さんが解説されています)

tomomachi.stores.jp

正しくその思想を反映するように、この作品のエンディングにもいわゆる「劇映画的」な「感動のエンディング」は用意されていません。ただし、それで良いのです。

この映画に限らず、多くの人が多かれ少なかれ「罪」を背負って生きているはず。そしてそれらの「罪」には、分かりやすい形では「赦し」は与えられないし、「断罪」もされません。そうなればこの作品のリーのように「罪」を「癒えない傷」として受け入れた上で、進んでいくしかない。そんな「解」を与えてくれる作品でした。

静かで、何も具体的な事件が起きないこの映画が、それでいて「深い感動」を与えてくれるのは、そんな我々の人生においても「普遍的なテーマ」を伝えてくれているからだと思うのです。

個人的には今年見た中では「沈黙-サイレンスー」に並ぶ傑作でした。おすすめです!

 

Fateの話をしようじゃないか、という雑談(後篇)~「エミヤシロウ」の「Brave Shine」~

※注:本文は「Fate/stay night」および「Fate/hollow ataraxia」「Fate/Zero」更にはTYPE-MOON作品に関してのハッキリとしたネタバレが含まれているので、同作品を未プレイ・ならびに「これからプレイしようとしいる人」はまず、一通りプレイしてからお読みいただけると良いと思います。

 

Fate/stay night [Unlimited Blade Works] Blu-ray Disc Box ?【完全生産限定版】

Fate/Stay night」という作品は、セイバーをヒロインとする「Fate」、遠坂凛をヒロインとする「Unlimited Blade Works」、間桐桜をヒロインとする「Heven's Feel」の3篇にて構成されている。

「ストーリー忘れちまった!」という貴兄は下記にて簡潔にまとめられているので、参照されたし(当然ネタバレ全開なのでお気を付け下さい)。

gamy.jp

衛宮士郎の「歪み」

全てのシナリオで共通しているのは、主人公が衛宮士郎である...ということ。それだけでなくシナリオを進めるたびに士郎という人が「どういう人物」であるのかが明らかになる。それと同時に彼が抱える「歪み」が明らかになっていき、同時にそれに対する「解決策」を見出していく...という構造になっている。「士郎は主人公ではなくメインヒロイン」なんていう名言も昔あったけれど、言い得て妙で各エピソードにおいて、其々のヒロインと触れ合うことが、彼自身に「救い」を与えていく。そういう独特なシナリオ構造がこの作品にはある。

士郎が抱える「歪み」とは「正義の味方になる」という目的に起因する。義父であり、自分の命を「救ってくれた」衛宮切嗣から託されたこの「願い」は、切嗣が考えるよりももっと「重要な事柄」として士郎には捉えられてしまった。「冬木の大火災」によって「生き残った」彼は「生き残ってしまったことに苦しみを感じる」「サバイバーズズギルド」に苦しんでいる。その苦しみは、本来であれば「息をしているのを苦しく」感じるほど。士郎のそういった現状は、実はアニメを見ているだけでは、分かり辛い要素だったりする。

TYPE-MOONエースvol.9のインタビューによると士郎はきのこ氏曰く「壊れている奴」「士郎は人間にあこがれているロボットみたいなヤツ」。

  • そもそも生きるのが辛い人間。本来は息をしているだけでも苦しい人間がどうにかして人前で笑顔を作ろうとしているというのが「Fate」の根幹にはあると三浦氏(監督)に語ったそうだ。また最初に絵コンテを上げたときに「士郎をあまり幸せそうにみせないでほしい」とも三浦氏は言われたらしい。天涯孤独の身ではありますが、大河や桜といった心許せる人たちに囲まれて、充実した生活を送っています。しかし、そんな状況にあっても真に満たされてはいないことを匂わせてほしいと。

    衛宮士郎 - TYPE-MOON Wiki

「自分の人生」に「意味」や「目的」を見出せない。故に切嗣から与えられた「正義の味方」という「生き方」に固執する。 「自らの生」へ執着出来ないから、「他者の生」に執着する。「自分の為に生きる」のではなく「他者の為に生きる」ことを突き詰めようとしてしまう...。そんな彼の「あり方」までは切嗣も読み解けなかった。(とはいえそんな彼の在り方はセイバー=アルトリアと近くもあり。故に彼とアルトリアは"最も愛称の良いコンビ"とも呼ばれるのだろう。まま、それはまた別の話。)

結果として切嗣の「願い」を100%引き受けた彼は「正義の味方になる」ため「自分以外の誰か」を守り続け、最終的には「英霊」にまでなってしまう。「アーチャー=エミヤ」と「衛宮士郎」の対峙。それもまた「Stay night」という作品における重要なパートの一つとなっている。「自分自身のあり方」そして「その行く末」と対峙する事は、正しく「自問自答」と言い換えても良いだろう。全3章の中でも2章「UBW」が最も高い人気を誇るのも、この章に主人公たる「衛宮士郎」の凡そ全ての要素が詰まっているからだろう。

■「エミヤ」と「士郎」を分かつもの。

「自分自身=アーチャー」との対峙が最大のポイントとして設定されているのは第2章にあたる「Unlimied Brade Works」。この章では初めて「アーチャー=エミヤ」であること、そして何故「士郎」が「エミヤ」という「英霊」になったのかが明かされる。士郎が「正義の味方」になることを追い求めた結末としての「英霊化」。「英霊」になるということは「世界の守り人」として永久に「使役」される羽目になるということ。しかし士郎は「正義の味方になること」そして「恒久的な世界平和」を実現するために、それを受け入れる。

しかし使役される度に無駄な戦いを繰り返し「世界平和」という理想へとたどり着けない現実は士郎の望んだ「願い」とも「希望」ともほど遠いものだった。「自分勝手な都合」で争いを始め、いざとなると平然と自分を裏切る「勝手な人間たち」にうんざりする日々。数千回、数万回と繰り返される争い、それに加わる自分。叶わぬ「願い」。いつしか英霊「エミヤ」は、望んだ「願いを諦めた」。そしてこの「輪廻」へと追い込んだ自分自身を「恨む」ようになる。英霊「エミヤ」の願いは、過去の「自分を殺す」ないしは「説き伏せて夢を諦めさせること」に変わった。何度となく英霊として使役される中で、いずれ「自分自身と出会う日」を待ちわびながら。

UBW」は士郎が「エミヤ」との問いかけを通して自らの夢の「矛盾」や「未熟」さに気付きながら、改めてそれを「再肯定」するまでを描いた物語。とはいえ、ただ「再肯定」するだけでは士郎は「エミヤ」と同じ道を辿ってしまう。そこで重要になる要素は遠坂凛だ。

・士郎は凛が側にいる限り、エミヤになることはないとされている。つまり、どのルートでも凛と決別しない限り、その後に士郎がエミヤになることはない。またこれは、アーチャーにとって凛に召喚されたことが、遠回りではあるが救済となった事を意味する。逆に言えば、凛に召喚された彼は、生前は凛と決別したということになる。

エミヤ - TYPE-MOON Wiki

 英霊となったエミヤと士郎とは、既に「別の人間」なのだそうだが、「エミヤとなる前の士郎」も「凛には出会っている」らしい(ややこしい)。にも拘わらず彼が「英霊」となってしまったのは、どこかのタイミングで「凛と袂を分かったから」と思われる。「UBW」では「エミヤ」と「士郎」とが幾度となくぶつかり合うなかで、両者を分かつ鍵が「凛」であることが明らかになる。その中で「エミヤ」は、「士郎」が「凛」と離れる事が無ければ「自分」にならない事を理解し、「自分自身」のこれからを「凛」に託して消失する。とはいえ「エミヤ」の運命は何も変わらない。「人類の守護者」である枷は未来永劫エミヤを縛り、彼は争いが起こるたびに使役される。それでも自分自身の人生を呪わず肯定できるようになったからこそ、彼は「UBW」のラストシーンで

「それでも───俺は、間違えてなどいなかった───」

と自分自身を認めることが出来るようになる。それは「士郎」にとってだけでなく「エミヤ」にとっても凛との再会が「救い」となったことを示す証明でもある。

 

■「Brave Shine

アニメ版(2014~2015年版)「UBW」の主題歌として採用されたAimerの「Brave Shine」。「自分自身の声が出なくなった体験を元に詩を書いた」と彼女は語っていたが、それだけでなく明確に「UBW」の世界観が反映された素晴らしい歌詞だと感じたので、ここではその歌詞を解体してみたい。

”左手に隠した 願いは願いのままで
覚めない幻見てた
右手には空の記憶 誰もしらない世界の果て
やまない雨にうたれていた”
 
唄い出し部分。
注目したいのは「左手」と「右手」というモチーフ。ご存じの通り「アーチャー=エミヤ」は「弓兵」のサーヴァントでありながら「剣製」に特化した自身の魔術適正を反映させて干将(かんしょう)・莫耶(ばくや)という夫婦剣を主な武器として使用する。それぞれ陽と陰の性質を持つこの双剣はエミヤと士郎を象徴する存在。また同一人物でありながら「相反する」「理想」を持つ「エミヤ」と「士郎」の抱える「対立」や「矛盾」を象徴する存在でもある。
また「Heaven's Feel」篇において左腕を失った士郎は、アーチャーの左腕を自分自身に移植することになる。そう考えれば「左手」は「エミヤ」の視点、「右手」は「士郎」の視点という風にも受け取れる。
「左手に隠した願いは願いのままで 覚めない幻(ゆめ)を見てた」
とはまさしく「エミヤ」が歩んだ道のりに似ている。「世界平和」=「願い」を抱えて、「英霊としての日々」=「覚めない幻(ゆめ)」を見ていたのは、英霊となったばかりの「エミヤ」だろう。
「右手には空の記憶 誰もしらない世界の果て やまない雨にうたれていた」
衛宮士郎」となる以前の記憶を意図的に「消失」した士郎。故に彼は「空の記憶」を抱えている。「世界の果て」とは極東である日本。「やまない雨」は「冬木の大火災」時に士郎が切嗣に発見された際の天候と一致する。
 
”守りたいものを守れる強さ
それを信じられなくなる弱さ
すべてを受け入れて 未来を探す”
 
「守りたいものを守れる強さ」と「それを信じられなくなる弱さ」は「エミヤ」が併せ持つもの。それらを「すべて受け入れて」「未来(あした)」を探すのは「士郎」の視点。
 
Brave shine 手を伸ばせばまだ
Stay the night 傷だらけの夜
You save my life かざした刃の先に想いを重ねた
祈りは時を超えて”
 
「Stay the night」はもちろん「Fate/stay night」にかけたもの。「かざした刃の先に想いを重ねた」のは「士郎」とエミヤ」。それぞれの「刃」を重ねることで、それぞれの「想い」を理解した彼ら。その祈りは「時を超えて」果たされることになる。
 
”光ること忘れた 青い星が残してく
消えない影見てた
すれ違う赤の軌道 何も知らない子供のまま
明けない夜を彷徨ってた”
 
「青い星」に関しては厳密には分からないが、「青」が連想させるのは「セイバー」。同時に「赤の軌道」は「赤」がイメージカラーの「凛」を思い起こさせる。「エミヤ」は「士郎」と同じく第5次聖杯戦争を体験していることから考えて、彼が「過去」を思い起こしているようにも思える。「何も知らない子供」とはかつての「自分自身」と捉えられる。
 
”失くせないものを失くした弱さ
何も信じられなくなる脆さ
立てなくなっても 運命は進む”
 
「失くせないもの」とは自分自身がかつて頂いた「理想」。それを「失くし」「何も信じられなく」なったのは「エミヤ」。しかし彼が「立てなくなって」も、「サーヴァントとして使役される」「運命(さだめ)」を覆すことはできない。
 
”Break down 崩れ堕ちてゆく星座が 傷つけあう夜
You're breaking dawn 交わした約束の中に
独りを支えた確かな理想を添えて”
 
「交わした約束(ことば)」とは切嗣と交わした約束だろう。「じいさんの代わりに正義の味方になる」。それは独りぼっちの士郎にとって、その空虚を埋める要因となった。「確かな理想(ゆめ)」とは「正義の味方になる」という「夢」。また「理想」と書いて「夢」と読ませるのは、士郎の体内に埋め込まれたエクスカリバーの鞘「全ては遠き理想郷(アヴァロン)」を思い起こさせる。この鞘の存在が、士郎をセイバーへと引合す運命のきっかけとなることを考えても、この歌詞は意味深だ。
 
”守りたいものを守れるのなら
すべてを受け入れて 未来を探す
夜明けを灯す”
 
「守りたいものを守れる」可能性。自分が「英霊」とならずに「正義の味方」を目指す「未来」。それがあるのなら、自分の運命を「受け入れて」新たな「未来(あした)」を探すことが出来る。士郎との対峙、凛との邂逅から得た「エミヤ」の解。それは二人の「夜明けを灯す」こと。ギルガメッシュにとどめの一撃を加え、士郎を守ったエミヤ。彼は自らの運命を受け入れ、士郎の後身を託しながら、笑顔で凛に別れを告げる。朝焼けの中で。
 
Brave shine 手を伸ばせばまだ
Stay the night 傷だらけの夜
You save my life 重ねた涙の果てに光を見つけた
祈りは時を超えて
 
「英霊」としての日々に戻った「エミヤ」。彼は未だ夜の中で戦い続けている。しかしそんな変わらない日々でも彼は「見つけた」「光」を胸に戦い続ける。
「見つけた」「光」とは、凛のこと。彼女と共にある限り「士郎」は「エミヤ」にはならない。それは「士郎」を、ひいては「エミヤ」を救うことになる「光」。故に「エミヤ」は「You Save my life」と語りかける。そして「エミヤ」は「光=凛」へと「希望」を託す。彼女が放つBrave shineに願いを託して。英霊として彷徨う中でようやく見つけた「希望の光」。だからこそこの歌詞は「My brave shineという言葉で閉じられる。「それでも───俺は、間違えてなどいなかった───」
そう彼が自分自身を認めるために必要だった「光」。それを手にしたことで、この物語は終わりを迎える。
 
というわけで、3回に渡ってFateのお話をさせていただきました。とりとめのない内容ですみません。足りない部分などは、気が向いたときに加筆修正していきます。

Fateの話をしようじゃないか、という雑談(中篇)~empty 空っぽの人間~「Fate/Zero」の話

※注:本文は「Fate/stay night」および「Fate/hollow ataraxia」「Fate/Zero」更にはTYPE-MOON作品に関してのハッキリとしたネタバレが含まれているので、同作品を未プレイ・ならびに「これからプレイしようとしいる人」はまず、一通りプレイしてからお読みいただけると良いと思います。

 

 

まずは前後編にする予定が「中編」が加わってしまったことに関して。本来であれば、「Fate/Stay night」と「衛宮士郎」の話をして終わる予定だったのだけど、その前提として「Fate/Zero」の話もしておかねばと思い、こういった形にさせていただいた。

...というか話がしたくなったというだけ。

1編増えてしまったけど、懲りずにお付き合い頂けたら有り難い。

さて、「Fate/Zero」(以下Zero)は「Fate/Stay night」(以下SN)の前日譚と言えるお話。「SN」が「第5次聖杯戦争」を描く物語とすれば、「Zero」は「第4次聖杯戦争」を描いた物語だった。

また、「SN」において主人公である衛宮士郎、セイバー、藤村大河といった登場人物の「回想」にしか登場しなかった士郎の「義父」=衛宮切嗣(キリツグ)。彼を主人公とし、彼がいかにして「第4次聖杯戦争」を戦い、いかにして「士郎と出会ったのか」までを描く物語でもあった。

「SN」を知っていれば、この物語が「バッドエンド」へと突き進む物語ということは自明の理。そういう意味では「Fate=悲劇的な運命・逃れられぬ運命」というタイトルに最も見合った作品でもある。

 

「Zero」において特徴的なのは、登場人物のほとんどが「目的」を大前提として生きている(あるいは生かされている)「空っぽな人間」であるというところだろう。

主人公チーム=セイバーチームだけ見てみても、彼ら彼女らは皆「空っぽ」だ。

衛宮切嗣「正義の味方」になり「恒久的な世界平和」を実現するため、自らの近しい人物を容赦なく切り捨ててきた人物。「大」を救うために「小」を捨てる...という選択は、いつしか彼から「人間味」を喪失させ、「心を破壊」していった。また、どれだけその「選択」を取っても自らの「理想」へと近づいていかないことも、彼が「壊れる」要因となっていった。いつしか自らの力のみでの「理想」の実現に限界を感じた切嗣は「アインツベルンの秘術」と、それに伴う「全ての願いを叶える願望器=聖杯」の存在を知る。「過去すら改竄することが可能」な聖杯の力を以てすれば、己の「理想」を叶えられる。そう信じた彼は、いつしか守るべく「他者」のために「自分」をないがしろにする人間になっていった。最初に願った「正義の味方」とは遠い「目標」は、彼にとっての「理想」とはほど遠い、「目的」へと変わっていた。彼はいつしか「目的」のために生きる「空っぽな人間」になっていた。

切嗣の妻であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンは、アインツベルンが作り出した「ホムンクルス」であり、「聖杯」にとっての「外装」に過ぎない。もとより「余分」な存在として生み出され、短い生涯を以て死する運命を持ち、それを自覚する彼女もまた「空っぽな存在」であった。

切嗣につき従う久宇舞弥。紛争地帯に産まれ、自らの本名も知らぬまま少年兵(女性だが)として戦地を転戦。隊内で度重なる虐待、暴行(性的を含む)を受けた彼女も「心が殺された」人物であったが、その最中切嗣によって拾われた。その際に与えられた「仮の名前」である「久宇舞弥」を「本名」として受け入れた彼女は、自らの生を「切嗣の道具」として使うことを願う人物。自らの生に「願い」も「望み」も持たず(というよりも持てない)彼女は、正しく「空っぽな人間」と呼べるだろう。

そして、彼らのサーヴァントである「セイバー」ことアルトリア・ペンドラゴンも「空っぽな人間」。祖国「ブリテン復興」のため、「自分」ではない人物を「王として選出し直すため」に「聖杯」を求める彼女は、「国」や「国民」という大枠を大事にするあまり「自分自身」や「臣下」や「親族」をないがしろにした人物だった。彼女の「崇高な姿勢」は多くの臣下から愛され、同時に憎まれた。それを認識しつつも、しかし「聖杯」という「目的」のためにガムシャラに戦い続けたアルトリア。そこには「国王」としての義務はあっても、「人間」としての欲望がなかった(その本質と問題点は聖杯問答内でイスカンダルによって暴かれるわけだが)。そんな彼女は「空っぽ」と呼ばれても仕方のない人物だった。

その他の登場人物に関しても同じ。

魔術師として「深淵」を目指す遠坂時臣やケイネス・エルメロイ・アーチボルトも「魔術師」や「家」という「目的」の為に自らの「人間性を捨てた」人々だった。そのあり方は配偶者である遠坂葵や、婚約者であるソラウへも影響を与え、結果彼女たちの在り方も「ゆがめる」ことになってしまった。

「幼馴染への恋愛感情」や「自分自身が幸せだった日々を取り戻す」ために闘った間桐雁夜。しかしその価値観は一方的なもの。その一方的な価値観を対象に求め続け、それが対象へは一向に伝わらない彼もまた「空虚な目的」のために生き、死んでいく「空っぽな人間」だろう。

「人を殺すこと」にしか「生きがい」を見出せない雨生龍之介は明確に「空っぽ」であり、「自らの生きる理由を求め続ける」ものの「その回答が見いだせない」言峰綺礼も分かりやすいほどに「空っぽ」だ。

また「魔術師としての自らの実力を示し」「自分をバカにしている連中を見返す」という「矮小な願い」を求めるウェイバー・ベルベットも、「本質的な目的」を持たない「空っぽな人間」と言える。

ことほどさように「空っぽ人間」たちが、その「空っぽ」を埋めるために「聖杯」を求め、殺しあう物語が「Fate/Zero」だった。そこには「イデオロギー」はなく、故に戦いは凄惨を極めた。最終的に生き残った人間は3名。彼らの内誰も「聖杯」を手中に収めた者はおらず。そして「聖杯」自体も「願望器」からはほど遠い存在であることが明かされることになる。ある種「無為に終わった」聖杯戦争

しかしながらこの「聖杯戦争」が全くもって「徒労」であったかと、いうとそうではない。少なくとも、生き残った3名は、それぞれに「空っぽ」を埋める「解」を戦いの中で得ることになったのだから。

戦時、唯一無傷で生き残ったウェイバー・ベルベットは、最終局面においてライダー=イスカンダルと「主従の逆転」を行う。「生きろ、ウェイバー。すべてを見届け、そして生き存えて語るのだ。貴様の王の在り方を。このイスカンダルの疾走を」そんな主の言葉を得たウェイバーは、どこか投げやりだった「自らの生」への執着を知る。「生きろ」という「命」に従った彼が、決してかなわぬはずのギルガメッシュへも毅然と立ち向かうのは、彼がこの戦いを以て「一つの成長を迎えた」ことを現す要因だろう。

曲者だらけの「Zero」のチームの中で、唯一爽やかで「主人公然」としたチームだったライダーチーム。故にそのマスターであるウェイバーも、物語内では「唯一」と言って良いほど、ポジティブな「解」を得た人物と言える。

真逆に「ネガティヴ」な「解」を得てしまったのが言峰綺礼。「聖職者」としての在り方を愛し望みながら、それでも埋められぬ「空虚」を抱えていた彼が闘いの果てに理解したのは、「他者の不幸」を「愉悦」と捉える自分自身の「性質」だった。「聖杯」を穢し、満たしている「この世の全ての悪=アンリマユ」へと魅入られた彼は、本来死んでいたはずの肉体を「アンリマユ」によって生かされることになる。それは来たるべき次の聖杯戦争において、彼が主軸となって「アンリマユ」を起動させるため「聖杯」が選んだ采配だった。「神」と「聖杯」と「悪」への捻れた「信仰」を肯定「された」ことで、決定的に「狂ってしまった」言峰。彼がその「解」を今一度ぶつけるのは、ここから更に10年後となる。

自らの「願い」の決定的な「矛盾」を「解」として得てしまった衛宮切嗣。「聖杯」の役割を理解したうえで、破壊を試みるものの、それがかえって「冬木の大火災」を起こす要因にもなってしまう。「大勢を救うため」に「少数を切り捨ててきた」切嗣にとって、「愛すべき少数=アイリスフィールやイリヤ」を切り捨てたにも関わらず、「大勢の命が犠牲となった」「冬木の大火災」を起こしてしまったという事実は、それまでの「理想」や「思想」を根底から覆す事件となった。必死で生存者を求める亡者となった切嗣の目には、もはや言峰の姿は映らず。久宇舞弥が愛した「苛烈な切嗣」は、この時を以て完全に「死滅」した。大火災の中からようやくたった一人の生存者=士郎を見つけ出した切嗣。その瞬間にタイマーが0になるのは、「魔術師」「衛宮切嗣」の「戦い」と「理想」が「終わったこと」を示すためだろう。ただし同時にこの0は、新たな「物語」のスタートの合図でもある。

切嗣によって救われたことで、「それまでの人生」を切り離し、「衛宮士郎」としての人生をスタートさせた一人の少年。彼が切嗣の「意志」と「願い」を継ぎ、「正義の味方」となることが、切嗣にとっての「救い」にもなった。

しかし、士郎にとってこの選択は「呪い」にも等しいものとなる。「正義の味方になる」と誓ったその日から、士郎もまた「空っぽの人間」として生きていくこと強いられるからだ。「自分以外」の「誰か」の生命のために「自分をぞんざいに扱う」あり方は、他人からすれば「苛烈」で「歪」な生き方。

ただし士郎がそんな「歪」な生き方を選んだからこそ、「Fate/stay night」という物語は動き出す。

衛宮士郎という人物が選んだ「選択」によって、様々な可能性が生まれる世界。それを前提にして繰り広げられる戦いは「stay night」という物語が非常に「個人的な物語」であることを示す要因でもある。

次回「後編」では、そんな「Stay night」に関して、触れてみたいと思う。

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